アナログ原稿の同人誌でよくある印刷トラブル
好きな作品の二次創作やオリジナルの創作をしている人が、イベントへの参加や通販をするために同人誌をつくります。手書きにこだわっていたり、必要な機材を持っていない場合アナログな紙とペンを使って執筆をします。そんなアナログ原稿の同人誌を作るときによくある印刷トラブルにはどんなものがあるのかを、ここで紹介していきましょう。
もくじ
ページが抜けている状態で入稿してしまった
ファイルが全て一つにまとめられるデジタル原稿と違い、アナログ原稿の場合には紙ですから管理が行き届かなければ、何枚かが抜けてしまうことがあります。丁寧な対応をする印刷所であれば、抜けているページがあれば編集作業で発見してくれますが、ただ大雑把なチェックしかしていないところだとページが抜けている状態で同人誌になってしまう恐れがあります。
当然ながら、アナログ原稿でそんなトラブルがおきるのは、作者がしっかりと管理をしていなかったためであり、入稿前のチェックも怠っていたことが原因です。自分以外の責任にすることなどできません。時間の余裕があるならば、すぐにでも抜けているページを届ければいいのですが、そうでない場合には間に合わなくなる可能性もあります。
このようなトラブルが起きないようにするためには、ノンブル(ページ番号)を見て順番通りに並んでいるのかを確かめてから入稿しましょう。そうすればページが入れ替わっているというトラブルも防げるので、理想的な同人誌ができあがります。
貼り付けたトーンやセリフが剥がれてしまった
アナログ原稿では、ペンでは表現がしにくい模様や図柄をトーンと呼ばれる薄いフィルムを貼り付けて表現します。このトーンは、貼り付ける部分の形に合わせて切り抜き、台紙を剥がせば粘着面が露出します。そうして、ずれないように気をつけて貼り付ければ、印刷をしたときには紙に描かれているのと同じようになります。
それからセリフは、手書きの文字では大きさがバラバラになったり美しくないと感じるならば、吹き出しの部分に印刷された文字を貼り付けます。いわゆる写植と呼ばれており、これも基本的にはトーンと同じような作業です。ただ、その貼り付け方が弱いと、トーンやセリフが剥がれてしまうこともありえます。
そうなれば、話がわからなくなったり読者に与える印象が変わってしまうので、同人誌が台無しになります。そういうトラブルを防ぐためには、トーンであればしっかりと接着するようによく擦り、セリフを貼り付けるときには強力な糊を用意します。それでも剥がれるかもしれないと思うならば、透明なテープを使うという方法もあります。
汚れや折れがそのまま印刷されてしまう
アナログ原稿では紙とペンを使うわけですが、下書きに使った鉛筆が上手く消えていなかったり消しゴムで擦ったときに汚れが残ってしまうことがありえます。それにペン入れをするのにインクが垂れてしまったとか、手についた汚れが紙に付着するのもよくあることです。
後は切り抜いたトーンの切れ端もしっかりと処分しなければ、どこかに貼り付いてしまいます。紙ですから折れ曲がることもあります。アナログ原稿はデジタル原稿と違って、手描きならではの味というものがありますが、作者の意図していない汚れや紙の折れは同人誌にするべきではありません。問題のある箇所がごく僅かであれば許容できる範囲かもしれません。
ですが、キャラクターの顔や鮮やかな背景が汚れたら、作品に大きな影響を与えてしまいます。そういった事が起きないようにするためには、汚れや折れがつかないように細心の注意を払ってアナログ原稿を扱わなければいけません。執筆作業中も汚れないように手袋をするとか、保管するときにはファイルに入れておく工夫をすれば良い状態を保てます。
画材の選び方を失敗すると印刷が上手くできない
アナログ原稿でも、入稿した後はスキャナで読み取りをします。その際に、薄墨や鉛筆など読み取りが難しいものだと、同人誌にしたときに不自然な空白ができたり、色が塗りつぶされてしまうと言ったことが起こりえます。メタルカラーなど黒以外の色を使うのも、読み取りが難しいので止めたほうが良いです。
使う紙については専用の原稿用紙であれば規定のサイズで用意できますし、紙質や色などのトラブルになりにくいです。しかしながら、コピー用紙やノートを使ったりするとシワができたり紙の色まで読み取られてしまいます。
そうなると、あまり綺麗に印刷することはできません。サイズが違う場合には、そもそも受け付けてくれない可能性があるので気をつけましょう。このように画材に問題があるアナログ原稿は濃度の調整などに対応していれば入稿できますが、時間がかかるので入稿の期限が早まります。
ということで同人誌をつくるつもりなら、相応しい画材についての勉強をすることから始めましょう。印刷所のサイトやハウツー本などでは、執筆に向いている画材の紹介をしていますから、それをよく読んでおけば理解できます。
出来上がった同人誌の質が良くない
同人誌は最近ではデジタル原稿が増えたこともあり、職人がアナログ原稿を扱う機会が減っています。そのため、経験がほとんどなく腕のある職人がいない印刷所を利用すると、出来上がった同人誌の質が良くないこともあります。細かい線やトーンが読み取られずに空白になってしまうなどの問題が生じると、作品はまるで別物です。それで誰も責任を取らずに、作者が泣き寝入りをするケースもあります。
残念ながらアナログ原稿の扱いに慣れていないということをアナウンスする印刷会社というのはあまりないので、作者が事前に評判などを調べていくのが確実に大事な作品を守るための手段です。
同じように同人誌を作っている仲間同士でSNSや掲示板などで情報交換をすると、どこに頼めば良いのかというのがわかります。それから問題があるときに、アフターサービスで返金や刷り直しなどの対応があるのかどうかも確認するべきことです。心配ならば有料でも試し刷りをやっておくほうが良いでしょう。そうすれば、大量に不良品をつくることはなくなります。
アナログ原稿の行方がわからなくなった
ファイルを劣化なくコピーできるデジタル原稿と違い、紙に描くアナログ原稿はオリジナルが1つだけです。ですから、郵送やバイク便などで輸送している最中や、印刷所に届いてから行方がわからなくなったときには、非常に困ったことになります。もう一度同じ内容で描くのも困難で、たとえ描き直したところで締め切りに間に合うはずがありません。
行方がわからなくなるというのは、印刷後に起こることもあります。通常ならばアナログ原稿はすべてが終われば返却されますから、思い出として大切に保管しておけますし、需要があるならば何年後でも再版ができます。それが返却される前に紛失したら、苦労をして作品づくりをしたという記念品がなくなります。
それに再版しようと思っても、手元にオリジナルのアナログ原稿がないので再版ができません。出来上がった同人誌をスキャンすることで、再版できるケースもありますが、そうなると品質は落ちてしまいます。
このようなトラブルを防ぎたいならば、郵送やバイク便などを利用せず、自分の手で持込をすると良いでしょう。また、印刷所での紛失については、信頼できそうなところを探すしかありません。それで絶対に紛失は起きないという保証はないですが、少なくともリスクは抑えられます。
同人誌を作るためにアナログで執筆をするとき、ページの抜けやトーンやセリフの剥がれ、汚れがついている状態で入稿をすると完璧な出来にはなりません。また画材にも印刷に向いているものとそうではないものがあり、選択を間違えると失敗をします。あとは、技術・経験のない印刷所に頼むと同人誌が悪くなることがありますし、輸送中や返却前の紛失といったトラブルも起こります。