同人誌を作るなら知っておきたい!創作における王道・邪道とは
同人誌では、作者の趣味嗜好で、好きなキャラクターや好きなストーリーを描けます。オリジナルの作品を作るのはもちろん、原作がある作品のパロディとして二次創作を楽しむ人も多いです。そんな同人誌の制作は、王道と邪道に分けられます。この記事では、同人誌における王道と邪道はどんな意味を持つのか、詳しくご紹介します。
そもそも王道・邪道とは
まずは「王道」と「邪道」それぞれの言葉の意味を理解しておきましょう。
王道とは
王道とは「多くの人に指示されている」「メジャーである」「基本の道」といった意味があります。「王道」は、映画やドラマを評価するとき「王道のストーリー」と表したり、料理を評価するとき「王道の味」と表したりと、さまざまなシーンで使われている言葉です。
この王道という言葉、始まりは戦国時代の中国といわれています。中国の儒教の教えから生まれた言葉なのです。当時の儒学者である孟子が、君主や治世者を「王道」と「覇道」に分類しました。
そして、正義や勇気、信頼などで国を治めるほうを王道、暴力や処罰などの武力で国を治めるほうを覇道としたのです。武力で国を治めてもすぐに滅びてしまうのに対し、正義や勇気、信頼で国を治めるほうは国を繁栄と安定に導くとされ、王道は「正しい道」というような意味になりました。
邪道とは
邪道とは「人としてやってはいけない不正不実な行動」という意味です。現在では、ルール違反や人を騙すこと、本来の使い方以外の利用などを指すときに使われています。
邪道という言葉は、仏教の世界で使われ始めた言葉です。釈迦の教えや仏教の考えに反した思想、宗教のことを「邪道」といっていました。現在は王道の対義語としても使われています。
同人誌における王道
歴史の深い「王道」という言葉ですが、同人誌ではどのような意味合いを持っているのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
基本に忠実でポイントを押さえたストーリー設定
同人誌における「王道」という言葉は、基本に忠実でポイントを押さえたストーリー設定がされている作品のことを指します。予想どおりの展開や、お決まりの展開となるストーリーも、王道と表すでしょう。
王道カップリング
ストーリー設定だけでなく、同人誌のカップリングでも「王道カップリング」というものがあります。カップリングとは、作品の中で2人の登場人物の恋愛関係を指します。そして王道カップリングは、同人誌の作品で多数派といわれるカップリングを指します。
マンネリ化といわれることも
同人誌で多数派である王道ストーリーや王道カップリングですが、ときに「マンネリ化」や「ワンパターン」といわれてしまうこともあります。「王道」という言葉には、多数派の人に肯定される意味と、一部の人に批判される意味の両方の意味をもっているのです。
同人誌における邪道
同人誌における邪道とは、ストーリー設定が王道から外れたものや、押さえるべきポイントを押さえていない作品を指します。王道から外れたものと聞くと、マイナスなイメージを持ってしまいがちですが、案外そうでもありません。同人誌における邪道について深掘りしましょう。
邪道が好きな人もいる
同人誌では否定的な意味で使われることの多い「邪道」ですが、趣味嗜好を作品にするのが同人誌。好き好んで邪道の同人誌作品を読む人もいます。また、王道ストーリーや王道カップリングがマンネリ化して飽きてしまったという人は、邪道ストーリーや邪道カップリングに魅力を感じることが多いでしょう。実際に、同人誌の中でも邪道な作品として成功している作品もあります。
邪道カップリング
王道カップリングがあるように「邪道カップリング」というものもあります。同人誌のカップリングでは、恋愛関係にある2人を「受け」と「攻め」に分けます。王道カップリングでは、キャラクターとして受けのイメージが強いほうを受けとし、攻めのイメージが強いほうが攻めとされます。
そして邪道カップリングは、王道カップリングの受けと攻めが逆になったカップリングです。逆のカップリングなので「逆カップリング」とも呼ばれます。同じ登場人物でもカップリングの受けと攻めが逆転するだけで作品の方向性が大きく変わるため、王道カップリングと逆の邪道カップリングが批判されることも少なくありません。
邪道カップリングの作品を読んだ読者から「このキャラクターを受けにするなんてありえない」とクレームが届くこともあるのです。ただ、邪道ストーリーが好きな人もいるように、邪道カップリングに魅了されてしまう読者もいます。
王道も邪道も自由に制作できるのが同人誌
同人誌では、オリジナル作品や二次創作で、作者の好きなキャラクターを好きなカップリングで、受けと攻めも好きに設定できます。これが商業誌の漫画の場合、売れることを考えるとあまりにも少数派の邪道ストーリーや邪道カップリングにはしづらいです。
しかし同人誌は、王道にするのも邪道にするのも自由。それが同人誌の魅力ともいえます。ただし、ここで注意しなければいけないのが、同人誌の作者や読者は、一人ひとり考え方も好みも違うということです。
ときに「こんなカップリングにするなんて作品を理解していない」といったような批判が来ることもありますが、本来同人誌は、趣味として作品を制作するもの。
自分の趣味嗜好をほか人に押し付けるものではありません。同人誌の制作をするときは、自分の考えや好みとは違う読者やほかの作者がいることを肝に銘じておきましょう。
邪道の王道というのもある
最近は「邪道の王道」という言葉も生まれています。邪道なのか王道なのかどちらなのでしょうか?
王道から邪道へ変化する漫画のストーリー性
同人誌に限らず、世間で人気のあるアニメや漫画が、邪道ストーリーが増えている傾向にあります。たとえば、日本中の少年から成人男性まで幅広い年齢層を魅了している「ジャンプ」。
今までは、王道バトル漫画と呼ばれるものが多くありました。王道のバトル漫画とは、迫力あるバトルシーンや、登場人物たちの熱いストーリーです。しかし最近はバトルやストーリーより、登場人物の心情を描いたものが多くなっています。
具体的な例を挙げると、社会現象にもなったアニメ「鬼滅の刃」。主人公の炭治郎は、最初から正義感溢れるヒーローだったわけではありません。心優しい性格の炭治郎が、過去にあった悲しいでき事を経て旅に出る話です。
悲しい過去をもつ主人公の心情がリアルに描かれており、これまでの王道バトル漫画と比較すると、邪道ストーリーともいえます。しかしこの邪道ストーリーが、多くの人の心を掴み、社会現象ともいえるアニメへと成長したのです。このように、登場人物の心情にフォーカスしたストーリー性は「邪道の中の王道」といわれています。
まとめ
同人誌における王道と邪道について解説しました。王道や邪道という言葉は、古くから使われてきた、歴史ある言葉です。それが現在では、作品の方向性を示す言葉へと変化しています。王道でも邪道でも、どちらが正しくてどちらが間違っているということはありません。王道が好きな人もいれば、邪道が好きな人もいます。そして王道か邪道どちらのストーリーやカップリングにするかは、作者の自由です。これから同人誌の制作を考えている方は、ストーリーを考えるとき、王道と邪道を頭に入れておくと、ストーリーを組み立てやすいでしょう。ぜひ覚えておいてください。