同人誌をかわいらしく仕上げるには角丸加工を施そう
同人誌制作者の中にはコミックマーケットで売り上げを伸ばしたいと考えている人も多いでしょう。しかしライバルが多く、漫画の完成度を高めるだけでは注目されないことも。印刷をひと工夫するでも売り上げによい影響を与えることがあるため、できる工夫は行いたいものです。今回は印刷のオプションにある角丸加工について説明していきます。
冊子の角を丸くしていく角丸加工
「角丸加工」という言葉を聞き慣れない人も多いでしょうが、これは冊子(一枚だけならカード・フライヤ)の四つ角に丸みをつける工程のことです。一般的には、カードやフライヤーなどに使われることの多いオプションで、身近にあるものでいえばクレジットカードの四つ角がその加工が施されているため、誰しも一度は目にしたことがあるはずです。
そして、あまり知られていないのですが、冊子にも角丸加工を施すことができます。説明を聞くだけなら、丸くなるようにカットしただけだと思われがちですが、実は半径の大きさによって種類があります。印刷会社では一般的に3㎜とか10㎜といった表現方法で書かれていますが、これは角丸に沿って描かれた円の半径の大きさを示しています。
つまり、数値が大きければ大きいほど円に近い丸みが出てくることになります。その半径の大きさは、印刷会社や印刷物の素材(紙やプラスティックなど)、さらに、印刷物の大きさによってできるサイズが異なります。角丸加工を発注したいのならば事前に各印刷会社に問い合わせてみるのが良いでしょう。
また加工する場所はカード・フライヤならば四つ角全てを丸くすることがほとんどですが、同人誌などの冊子では片方側(背表紙の反対側)の2カ所を加工することが多いです。というのも、背表紙側の角を加工してしまうと強度が足りなくなって冊子の耐久度が落ちてしまうことが多いからです。そのため、背表紙側の加工は最初からお断りしている印刷会社も少なくありません。
かわいらしさを演出させてくれる角丸加工
では、角丸加工をするメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。まず、一番のメリットとしては「見た目が可愛いこと」を挙げられます。丸みは一般的に女性らしさをイメージさせることが多く、さらに、柔らかい印象を与えることが多いです。
そのため、同人漫画の中でも動物メインの作品や少女漫画テイストの作品、ほのぼのした内容の作品などは、角丸にする加工が作風とマッチして読み手に良い印象を与えるでしょう。一方、男性向けの表現が多い同人誌では、丸みのある加工でよい効果が出るとは限りません。
2つ目のメリットは「インパクトがあること」です。コミックマーケットでは大小さまざまなサークルが募っており、テーブル上に数多くの種類の同人誌が並べられています。売り上げアップのために最初に考えなくてはいけないのが、来場者に本を手に取って見てもらうこと。
手にとって初めて「買う」「買わない」の判断となってくるのです。そのためにはやはりインパクトが大切となります。多くのサークルでは表紙にインパクトのあるイラストを載せていますが、やはりどこも同じことをしています。でも、四角い冊子を売っているところに角丸加工している冊子が並べられていたらどうでしょうか。
形が違うことで目を引くことになり、手に取られる確率を上げることができそうではないでしょうか。一見小さな工夫に見えるかもしれませんが、意外とその小さな変化が注目されることはよくあります。どんなに素晴らしい内容の漫画を制作したとしても、誰にも目に留まってくれなければ売り上げはゼロですから、手に取ってもらうためにインパクトをつけることはとても大切です。
そして、意外なメリットとしては「本が丈夫になること」があります。煮物料理を作るときカットした大根をさらに「面取り」と呼ばれる作業をおこないます。これは、大根の角を取ることで長時間煮続けても型崩れしないための工夫で、角があるほうがそこから破損していくリスクがあるのです。これは冊子の角丸加工でも同じ効果を及ぼし、加工してないものと比べると長く保存し続けられるというメリットがあります。
最後のメリットとして「指が傷つくリスクが減ること」があります。角が尖っていたら、そこで擦ると手を切ることが紙を扱っている人なら誰しも経験したでしょう。でも、角を丸くするだけでそのリスクが大幅に減り、安心して冊子を扱いやすくなります。
角丸加工してもらうための注意点について
角丸加工をするにしても注意しなくてはいけないポイントがいくつかあります。その一つに漫画の内容です。一般的の原稿用紙で同じようにネーム(下書き)を書いて仕上げていったとすれば、印刷会社に製本を頼んだとき角丸でマンガの角のところが切り取られている事態に陥る可能性は十分にあるのです。
一応、印刷会社のスタッフもトラブルが起こらないようにチェックして、カットされる部分があることを指摘してくれることもありますが、当然描き直しをする必要が出てしまいます。するとコミックマーケットまでの間に合わないといったトラブルに発展してしまう可能性もあります。そのため、最初に角丸をするならするで決めておいて、加工するならどのくらいの半径のサイズにするかも定めておいたほうが良いでしょう。
そして、原稿用紙にどの部分までカットされるのかを予備線を書いてからネームに取りかかれば、マンガを仕上げて印刷会社で製本したときもマンガの部分をカットされたり、書き直して期日に間に合わなくなるといったトラブルを回避することができます。
また、角丸にする加工は他の印刷過程と違って、裁断する工程が必要となるため、他のオプションと違って時間がかかります。発注してもコミックマーケットまでに間に合わなければ、せっかく制作してきた同人誌も無駄になりかねません。そのため、納期がどのくらいかかるか把握しておく必要がありますし、なるべく余裕をもって発注したほうが良いでしょう。
そして、印刷会社に角丸にするという作業をしてもらうため、当然のことながらオプション料金がかかるところがほとんどです。多くの同人サークルでは、一つの作品を作るのに予算が限られており、印刷会社にかかるオプション料金によって発行部数や全ページ数を抑える必要が出てくる可能性もあります。
そのようなことが起こらないようにするためにも、まずは印刷会社に見積もりをしてもらうのがベストです。その見積もりに合わせて、オプションやページ数を考慮することで、スムーズにマンガ作成をしていくことができます。
ちなみに、この角丸にするのは、通常通りに印刷会社に製本にしてもらってから、サークルメンバーの手作業で施すこともでき、オプション分の料金を節約することができるでしょう。ただし、その不慣れな人が手作業でおこなうため、不揃いになってあまり見栄えが悪くなるケースも少なくありません。可能な限り専門の印刷会社に依頼したほうが無難だと言えるでしょう。
このように、角丸加工とは同人誌を製本にする過程の一つで、冊子の四つ角の全てないし一部の角を丸くすることです。そうすることで、かわいらしさを演出することができ、コミックマーケットで他のサークルの作品と差別化することもできます。冊子が傷みにくくなる効果や、手を切るリスクを減らす効果もあります。
ただし、印刷会社でオプション依頼して新しい工程を加えるため、お金も納期も通常よりもかかりますから、ネームの段階で印刷会社に見積もりや相談をしておくのもよいでしょう。カットする部分は漫画で表現できなくなることを注意しながら制作していけば、スムーズに製本まで仕上げていくことができます。