同人誌を再販する際はデータを再度送る必要がある?
同人誌を販売してみると当初予定していたよりも売れ行きが良く、増刷して再販したいというケースがあります。
また過去に制作した作品に使っていたキャラクターやストーリーなどに人気が出てきたから、古い作品だけど再度販売して見たいと思うときもあるでしょう。
このようなときに業者にもう一度原稿データを送る必要があるのでしょうか。
標準的なサービスならデータを送る必要がある
一般的な業者が提供しているプランでは、依頼した部数だけ一度の依頼で作ってくれる形になっています。1.000部依頼した場合にはその納品が終わったら契約は終了で、また印刷して欲しいというときには申し込み直さなければならないのが原則です。つまり、人気があるから再販したいので増刷して欲しいという要望には答えてくれない可能性が高いと考えておく必要があります。
ただし、あくまで原則なので、初版を依頼した業者に問い合わせてみると良いでしょう。基本的には業者は入稿されたデータを長期的には保管しないようにしています。次々に新たな顧客からの依頼を受けているのでデータを探しにくくなるから、ストレージを圧迫してしまうからというのも理由ではありますが、むしろ依頼者のために削除する方針を取っているのです。
依頼主の著作物のデータをスタッフの誰かが勝手に盗み出してしまい、自前で製本して販売してしまったら業者のほうも責任を問われることになってしまいます。原稿をそのまま使わなかったケースでも、イラストや写真などの一部を切り取って使われてしまうリスクがあるのも事実です。
現場にはアルバイトやパートの人もいて、セキュリティーを充実させておいても管理できる範囲には限界があります。そのため、依頼が終わったデータは速やかに削除して顧客情報しか残さないというケースが多いのです。
納品が終わったらすぐに削除するということもありますが、不備などが見つかって修正したものを納品して欲しいというクレームにも対応しなければならないリスクもあります。そのため、一定期間はデータを残しておいて、その期間が過ぎたら削除するというシステムにしている業者がほとんどです。
納品を受けてすぐに販売し、売れ行きが良くてすぐにでも増刷したいというようなときにはデータを入稿しなくても大丈夫な可能性もあります。データが残っているかを確認したうえで依頼するかどうかを判断しても問題はありません。
ただ、たとえデータが残っていなかったとしても同じ業者に依頼するメリットはあります。顧客情報は残っているので依頼はスムーズに進められることが多いでしょう。
過去の打ち合わせの情報が克明に記録されている場合もあり、色合いなどの設定をその当時のものにして、以前と全く同じ出来栄えのものを納品してくれる可能性もあります。顧客情報をどれだけ残しているかは業者によって違うので一概に楽になるとは言えませんが、スムーズに再販に漕ぎ着けられるという期待を持てます。
このようにデータを再度入稿しなければならない可能性が高いことを考慮して、再販を見越して多めの部数で発注しておくというのも良い考え方です。大量に手に入れてしまうと保管が大変だと感じるかもしれませんが、業者によっては自社倉庫に保管してくれて分納を依頼できます。
最終的にはこのくらい売れるだろうと予想が立っているようなケースでは最初に大ロットで依頼してしまい、必要に応じて送ってもらう形にしたほうがコストパフォーマンスも高くて魅力的でしょう。ただし、分納の場合にはその度に送料がかかる仕組みになっていることが多いので注意が必要です。
オンデマンドでの契約にしておけばデータは不要
将来的に再販する可能性があるというときには業者が提供しているプランをよく確認してみるのが大切です。多くの業者ではオンデマンドに対応しているプランを持っています。
オンデマンド印刷なら依頼するとその都度必要な部数だけ準備して納品を受けることが可能です。業者によってオンデマンドにしたときにどのような形でデータ管理をするか、部数や納期などの対応がどうなっているかは違うので十分にサービス内容を確認しておきましょう。
まず、データについては高いセキュリティーの下で保管し、要求があったときにはそのデータを使うというパターンがあります。最初も増刷も小ロットのケースではよく用いられる方法で、数部単位でも依頼できるのがメリットです。
一方、データは納品の頃に全て削除してしまい、それ以降の依頼に対しては版を使うというパターンもあります。これが本来のオンデマンドの方法として知られていて、版ができてしまっているのでデータは必要ありません。
セキュリティー面から安心なだけでなく、完成した同人誌の品質も維持されるのがメリットです。最初に版代が必要になりますが、単価が下がることからたくさん発注するとトータルとしては安上がりになります。販売数が多くなる見込みで、増刷も繰り返しおこなう可能性が高いのなら版を作って対応してもらうのが賢明です。
再販したいときには初版よりも多くするか、少なくするかでも悩むことがあります。業者によってロットの大きさに関する対応力はかなり違うので気をつけましょう。それとあわせて確認しておきたいのは納期です。大ロットの発注には大抵の業者が対応してくれますが、納期の長さにはかなりの差が生じます。
このバランスを考えてどの業者に依頼するかを決めるのも重要なのです。一般的には繰り返し増刷することで売れ残りがないようにする傾向があります。そのためには小ロットでの対応力が高い業者にオンデマンドのプランで依頼するのが適切でしょう。
増刷を依頼する前に確認すると良い点
データを再度送る必要がある場合にも、送る必要がない場合にも依頼する前に確認しておいたほうが良いポイントがあります。データを送る必要があるケースでは、以前と対応形式が違っている可能性があるので注意しなければなりません。
PDFファイルにしか対応していない業者もあれば、さまざまなソフトウェアの形式のファイルで納品を受け付けているところもあります。以前は対応していた形式も、今は使えないというケースもあるので確認が必要なのです。
また、テンプレートについても同様で、テンプレートに合わせて原稿ができていると安くなる業者もたくさんあります。しかし、以前とテンプレートの仕様が変わってしまっていて、作り直さなければならないこともあるのです。
データを送るかどうかにかかわらず、再度サンプルを確認して出来栄えが大丈夫かを判断するのも大切です。版ができているオンデマンド対応の場合にはあまり大きな問題にならないことが多いですが、初版とは違う仕上がりになってしまうことも珍しくありません。
パソコンやOSの変更があったり、プリンターやインクが違っていたりするだけで違いが生じてしまうことはよくあります。特に以前依頼してから長い間が空いていた場合にはサンプルを見て、それで良いかどうかを確認したほうが良いでしょう。
同人誌を再販したいと考えたときに、初版を依頼した業者に再度データを送る必要があるかどうかはどんなプランで契約したかによって決まります。基本的にはセキュリティーのためにデータは削除させてしまいますが、オンデマンドの契約にしてあればいつでも必要な部数だけ印刷してもらうことが可能です。
データを再度送るかどうかにかかわらず、以前とは違う仕上がりになってしまう可能性があるので、必ずサンプルを確認してから発注しましょう。