QRコードを同人誌に印刷したい!印刷・運用時の注意点とは
大切な作品を世の中に送り出す以上、購入してくれた方にはまたリピーターになってほしいものです。また、ファンの方と交流できると前向きな気持ちで創作活動に励むことができます。近年交流のツールとしても人気が上昇しているのは「QRコード」です。お店でもよく使われるQRコードを運用する場合の印刷方法や注意点について解説します。
同人誌におけるQRコードの役割
飲食店や美容室など、さまざまなお店で飾られていることの多いQRコードは、コード提供者側がアクセスしてほしいサイトへピンポイントに誘導できる便利なツールです。大手企業は懸賞企画にも頻繁に使用しています。たとえば、気になるお店があってもサイトのURLをいちいち入力をするのは大変な手間ですがQRコードを読み込めばすぐにサイトへ飛んでいけます。
では、一般的な飲食店などにおけるQRコードの役割はわかりますが、同人誌におけるQRコードにはどんな役割があるでしょうか。スマホでコードを読み込むだけで簡単に飛べる、というQRコードの特徴を生かし、「感想を送る」ための機能として人気を得ているのです。一般的に流通している書籍がお手元にあるならぜひご覧いただきたいのですが、本には「奥付」と呼ばれるページがあります。書籍の終わりのページに、著作名や発行した出版社、第何版なのかなど細かく記載されています。
同人誌にもこの奥付に類似した内容をページ終わりに設けることが多く、作家・サークル名を記載しメールアドレスなどの連絡先を載せています。同人誌の多くの作家たちは自身のHPやSNSのアカウントも運用していることが多く、そうした情報を記載することもあります。そして感想をもらうためのツールとしてQRコードを記載しているのです。購入者が奥付にあるQRコードを読み込むと、匿名のアンケートサイトや、匿名で感想を送るサイトに飛ぶように設定しています。
作家側としてはたくさんのファンからの応援やコメント、次の作品へのヒントをもらうことができます。購入者側としてはメールで感想を伝えることはハードルが高くても、匿名の専用ツールなら応援メッセージを送りやすいというメリットがあります。つまり、たった1つのQRコードがあれば、以前よりもグッと作者とファンの距離を縮められるのです。
オンデマンド印刷では読み取りにくい可能性がある
便利で機能的なQRコードを早速ご自身の同人誌に載せたい、と検討される場合に知っておくべきポイントがあります。それは「印刷時のポイント」です。QRコードはご覧いただくとわかるように、白黒の複雑なモザイク模様のようなデザインで作られています。
これは「グリッド」と呼ばれるものです。同じパターンは2つとなく、複雑に組み合わせて各サイトへの誘導を行っています。QRコードはグリッドの白と黒のデザインがはっきりと印刷できていないと、スマホのなどカメラでうまく認識できず、サイトへ飛べないというトラブルが起きるのです。少しでも不鮮明な箇所がある不正確なコードになってしまうため、ハイレベルな印刷を行う必要があります。
また、QRコードの複雑さは情報量の多さに直結しています。コード内に登録したい情報を多くしてしまうと、グリッドが複雑化し印刷ハードルがどんどん上がってしまうのです。同人誌の発行は低コストで行いたい方が多い中で、QRコードのハードルを上げてしまうと、せっかく記載したのにまったく使えないことになってしまいます。
では、印刷時にはどんな要望を伝えるべきでしょうか。オンデマンド印刷を使う場合には「印刷サイズ」に充分な配慮をしましょう。一般的には8mmより小さい場合は認識率が低下します。加えて、意外かもしれませんがQRコードには余白も必要です。実際にオンデマンド印刷を行う場合には余白も含めてデザインだと思っておきましょう。
よくある奥付のミスには、良かれと思って入れていたイラストが重なってしまうというトラブルが見られます。奥付にはQRコードとイラストが重ならないようにデザインをすることが大切です。「2〜3mm」は余白がないと、その他の部分との境目がないため識別しにくくなってしまいます。
実際に多くの同人誌作家やサークルがQRコードの失敗談を語っています。そこで、実際にオンデマンド印刷を依頼する前にはテスト印刷を行い、その後しっかりとご自身でリンク先へ誘導できているのか確認をしましょう。小さなひと手間が大きなトラブルを未然に防ぐコツです。
運用するうえでの注意点
無事にオンデマンド印刷などでも問題がなく、無事に配本も終えたら作家・サークル側も一安心です。しかし、ここからは実際のQRコードの運用段階に入ります。では、運用を行っていく上で注意点はあるのでしょうか。主な注意点は5つあります。
まず1つ目は、「感想サイトによってはコメントが審査されている」という点です。同人誌界隈の方はよく18歳以上が対象となる作品も取り扱いますが、匿名感想サイトはその特性上、特定の用語を見つけたらNGワードとして認識し、届かないように処理をするのです。もしもご自身の作風が18歳以上対象のものなら、感想を受け取りにくい可能性があります。どういうサイトなら自分の作風に合っているのか、入念に調べておきましょう。
2つ目の注意点は「悪意が届く可能性」です。悪意を意図的に減らしている感想ツールもありますが、悪意のあるコメントをすべて弾いて削除できるわけではありません。作家・サークルの方々に粘着してくる、悪意のあるコメントを送りつけるなどの行ために悩んでいることも多く、QRコードをあえて奥付に入れない方もいます。悪意が多い場合には運用にストレスを感じてしまうので、入念に検討してから導入をされることがおすすめです。
3つ目の注意点は「コメントを求められる」点です。熱心なファンの存在は創作意欲を掻き立ててくれる起爆剤になりますが、一方で悪意はなくてもコメントを求めてくる方が多いのも事実です。ちょっとした日常的な会話もどんどん送ってくるケースもあるので、運用にはどの程度返信を行うべきか、QRコードの導入前に検討しておきましょう。また、サークル内であえてコメントの担当者を変えていくことでストレスを軽減することも可能です。
4つ目の注意点は「対応方針を決める」ことです。熱心なコメントにだけリプライを掲載していくと、その他の方から残念な印象を持たれる可能性があります。もちろん悪意には返信をする必要はないですが、大切なコメントに関しては一律の対応方針を決めておくことが無難です。「せっかくコメントしたのに自分には無反応だった」と思わせてしまうと、大切なファンを傷つけてしまう可能性もあります。一律に対応する方が双方にとってストレスがありません。匿名性のコメントである点を生かして、男女どちらにも偏らないスタンスがおすすめです。簡潔なコメントで運用する、あるいはすべてに熱心に返すなど、ご自身に合った運用スタイルを決めておきましょう。
最後に5つ目は「気負い過ぎないこと」です。同人誌の世界は奥深いもので、コメントが実際に届くようになるとつい熱を上げて入れ込んでしまいます。ファンとの距離が近くなる分、傷づいたり喜んだりと作家側も感情のアップダウンを感じやすくなります。しかし、ある程度はビジネスライクな気持ちで臨むことも大切です。気負いなく楽しみながら運用しましょう。
この記事では便利なQRコードの運用や注意点などについて触れていきました。大切な作品の奥付に、ちょっとしたアイディアを載せることでファンとの距離も縮まります。一方で、デザインや運用の難しさもあります。デザインには余白と、運用には余裕を持ちながら便利さを享受しましょう。