同人誌印刷の製本方法:並製本とは
製本の方法は、大きく上製本と並製本の2種類に分けられます。一般的に同人誌では並製本が採用されているケースが多いのですが、この製本方法にはどのような特徴があるのか知らないという方も多いかと思います。また、並製本には無線綴じ・中綴じ・平綴じなどの種類があるのですが、ここでは並製本の特徴と種類について解説していきます。
もくじ
並製本とは?上製本との違いについて
並製本とは、接着剤や針金、糸などで簡易的に綴じる製本方法で、文庫本や雑誌、パンフレットなどで採用されています。綴じ方によって、無線綴じ・中綴じ・平綴じなどに分けることができますが、いわゆるハードカバー本の製本方法である上製本とは異なり、表紙が本文用紙と同じサイズで柔らかいという特徴があります。
並製本は本文を表紙で包んだシンプルな製本方法なので、上製本と比べて耐久性が低く見た目の高級感もありません。しかし、上製本と比べて製本の工程がシンプルなので低コストで印刷会社に依頼できるというメリットがあります。
加えて、低コストで作成できるだけでなく、短期間で大量に製本できるので納期が短いという特徴もあります。そのため、低コストかつ短納期で同人誌を作成したいという場合は上製本ではなく並製本を選択すると良いでしょう。 また、低コストで作成することで同人誌の販売価格を抑えることもできるので、より多くの方に手に取ってもらえる可能性が高まるとともに、在庫が残ってしまうリスクを軽減することが可能です。
無線綴じとは?メリット・デメリットについて
無線綴じとは、1枚ずつ切り離された本文をページ順に重ねた上で、背の部分に接着剤を塗り表紙で包む製本方法です。線(糸や針金)を使用しないことから無線綴じと呼ばれており、並製本だけでなく上製本でも使われています。 糸や針金を使用せず表紙で本文を包んで綴じる方法なので、ページ数が多い場合でも問題なく綴じることが可能です。
また、本文と表紙を接着剤で留めるため、ノド(本を開いたときの綴じ部付近のこと)に強度があるというメリットもあります。さらに、無線綴じは本の背が平たくなるという特徴もあります。そのため、背表紙部分に厚みがある場合は背表紙に文字を入れることも可能です。
一方で、用紙数が少なくなると接着剤を塗る部分も少なくなるので、ページ数が少ない場合、無線綴じは適しません。加えて、ページを180度開くことができないというデメリットもあるので見開きページには適さず、原稿を作成する際はノドを空白にするような工夫をする必要があります。表紙を作成する際も注意が必要で、背幅(背表紙の幅)を考慮した上でデザインしなければいけません。
中綴じとは?メリット・デメリットについて
中綴じとは、表紙と本文を重ねて二つ折りにした上で折り目部分をホチキスで留めるという製本方法です。無線綴じで綴じられないような少ページでも綴じることが可能で、中央部を180度開けるという特徴があります。そのため、見開きページを使用したい場合に適した製本方法となりますが、それ以外にも無線綴じと比べて印刷コストを抑えられることや、薄い仕上がりとなるので持ち運びや配布がしやすいといったメリットもあります。
一方で、中綴じは用紙数が多くなるとホチキスで留めることができません。印刷会社によって綴じられる枚数は異なりますが、ページ数が多くなる場合はその他の製本方法を選択しなければいけない可能性があることを念頭に置いておく必要があります。
また、二つ折りにして綴じるという方法なので、ページ数を4の倍数に調整しなければいけないというデメリットもあります。 さらに、面付けが必要になるのも中綴じのデメリットです。面付けとは、製本した際に正しい順番になるように各ページを配置する作業のことを指します。1枚ずつ切り離された状態で製本される無線綴じとは異なり、中綴じは面付けが複雑になるというデメリットがあるので注意が必要です。
平綴じとは?メリット・デメリットについて
平綴じとは、ノドから5mmほどの部分をホチキスで留める製本方法です。厳密に言うと無線綴じも平綴じの一種なのですが、一般的に平綴じと言う場合はホチキスを使用した製本方法のことを指します。平綴じは、オフィスや学校などにおける資料作りの際によく使われる製本方法ですが、非常にシンプルな綴じ方なので低コストかつ短納期で作成することが可能です。
また、ノド付近をホチキスで留めているため丈夫ではありますが、無線綴じと同様にページを180度開くことができません。そのため、見開きページを使用したい場合には適さず、ノド付近を空白にする必要があります。加えて、中綴じと同様にページ数が多いと留められなくなってしまうので、基本的にページ数が少ない場合に適した製本方法となります。
なお、平綴じは丈夫な製本方法ではありますが、より強度を高めたい場合は背の部分を糊で固めた上でホチキス留めすることも可能です。ちなみに、教科書や少年誌などでは糊とホチキス留めによる綴じ方が採用されているケースが多いです。
無線綴じ・中綴じ・平綴じ以外の製本方法について
同人誌で採用される並製本の種類は、基本的に無線綴じ・中綴じ・平綴じの3種類ですが、並製本の種類はこれら3種類だけではありません。あじろ綴じは、無線綴じを改良した製本方法です。無線綴じでは、各ページをバラバラに切り離した上で背に接着剤を塗ることで固めますが、あじろ綴じでは背の部分に切れ込みを入れた上で接着剤を使用するという方法になります。切れ込みに接着剤が浸透するので通常の無線綴じよりも強度が高くなりますが、あじろ綴じは若干ページが開きにくくなるというデメリットがあります。
PUR綴じは、無線綴じで使われる接着剤にPUR系ホットメルト接着剤を採用した製本方法です。通常の無線綴じよりもコストが高く、納期も長くなるというデメリットはありますが、耐久性や耐熱性に優れるというメリットがあります。また、通常の無線綴じよりもページが開きやすいので、ページ数が多くなるものの見開きを使いたいという場合に適しています。
リング製本は、本文と表紙に穴をあけた上でプラスチックのリングで留めるという製本方法です。同人誌で採用されるケースはほとんどありませんが、ページを360度開くことが可能で、手を放しても本が閉じにくいというメリットがあります。
同人誌の綴じ方でメジャーなのは無線綴じ・中綴じの2種類
上記の通り、並製本には様々な種類がありますが、印刷会社に依頼して同人誌を作成する場合は無線綴じか中綴じのどちらかが採用されるケースがほとんどです。これら2種類の製本方法はどちらもメリット・デメリットがあるため、一概にどちらを採用すべきとは言い切れませんが、ページ数が多くなる場合は無線綴じを選ぶと良いでしょう。
無線綴じは、ページを180度開くことができないため、見開きが使いにくいというデメリットがありますが、中綴じよりも高い耐久性を誇ります。また、背幅を考慮して表紙をデザインする必要がありますが、背表紙に文字が入れられるので陳列した際に手に取ってもらいやすいというメリットもあります。
一方で、ページ数が少ない場合は中綴じがおすすめです。中綴じは、二つ折りした上で製本するという特性上、ページ数を4の倍数に調整する必要があるとともに、面付け作業に手間と時間がかかります。しかし、ページを180度開くことができるので見開きを多用したい場合にも適していますし、無線綴じよりも印刷コストを抑えることができるので予算が限られているいう方も中綴じを選択すると良いでしょう。
製本の方法は大きく上製本と並製本の2種類に分けられますが、ほとんどの同人誌は並製本を採用しています。また、並製本にも様々な種類がありますが、その中でも無線綴じと中綴じの2種類がメジャーです。そのため、同人誌を作成する際は無線綴じか中綴じを選択するのが無難ですが、これらはそれぞれ特徴が異なるのでページ数や予算などに応じて適切な方を選択しましょう。