モノクロの同人誌を作りたいときの印刷の注意点
モノクロで同人誌を作るには、コピー機を利用するか印刷所に入稿してオフセット印刷するかを選ぶことになります。入稿して綺麗な本にしたいという場合、慣れていないと直前に一からやり直しになったり慌てたりすることも多いものです。確実に納品日に間に合うようにするために、モノクロ印刷に関する注意点をあげてみました。
もくじ
本の仕上がりサイズを統一させる
まず原稿の作成段階で製本の仕上がりサイズを確定させます。同人誌原稿の場合は商業誌のB4サイズよりも小さめのA4サイズ、B5サイズ、文庫・新書サイズなどを使うことが多いです。大きい原稿サイズから小さくすることは可能ですが、もともと小さい原稿を拡大するのは解像度の面からあまりおすすめできません。
デジタル原稿の場合は、漫画ソフトの原稿設定の時点で指定できます。CLIPSTUDIOなどの専用の漫画機能が付いているソフトの場合は初期段階である程度設定してくれますが、自分でもその都度確認してください。ソフトの設定だけでなく各業者によって指定が異なることがありますので、依頼予定の業者のサイトを確認するなどして、必ず指示に従うようにしましょう。
製本する際の左右のページにも注意が必要です。見開きの場合大きく影響してきますし、左右の設定を間違えると修正が困難になります。後で慌てないように、初期段階からページ構成を考えて原稿を作成することが大切です。
また、ノンブル(ページ数表記)の指定を忘れないようにしておきましょう。これが入っていないと、ページの順番を間違えやすくなります。印刷に出ない断ち切りの部分に表示できますので、必ず記載してください。
解像度・裁ち落とし・原稿設定・書き出しは業者の指示に従おう
同様に、原稿作成前の時同様に、原稿作成前の時点で注意すべきなのは断ち落とし位置です。裁ち落とし幅は5mmや3mmがありますが、各業者によって異なりますので、それぞれ合わせるようにしてください。これにより原稿の枠のトンボのサイズや位置が変わってきて、原稿作成後に修正するのは大変困難になります。
解像度はモノクロの場合カラーよりも高く600dpi以上になります。1,200dpiでも可能ですが、通常は600dpiで大丈夫です。基本表現色はモノクロかグレースケールになり、基本線数は60.0です。60を超えるとトーンがつぶれてしまう可能性があります。
ファイルの書き出しは、業者によりますがPSD形式などを使っていることが多いです。ソフト専用のファイルだと受け付けてくれないので注意しましょう。各会社のサイトにテンプレートを置いていることも多いので、依頼したい業者のテンプレートや設定を前もって確認しておくことをおすすめします。
めったにないですが、トンボのサイズがソフトに入っている設定ではなく、独自のものを使っていることがあり、その場合は自力でトンボ枠を設定しなければなりません。
カラーモードはグレースケールかモノクロか
モノクロ印刷ではグレースケールとモノクロ2階調の二通りがあります。Web上で見る漫画原稿は滑らかに見えますが、Webではグレースケールで表現されています。Webで見る漫画はグレースケールで出力してかまわないのですが、印刷では少々異なってきます。グレースケールは黒0%から100%の白黒グレー、モノクロ2階調は白黒のみを使いトーン網点を使って表現しています。
モノクロ2階調だとトーンの細かい点までが出力され、いわゆるスクリーントーンのような点による表現ができますし、文字や線がシャープに出力されるという利点があります。そのため、解像度は1,200dpiが推奨されます。モニター越しにアップで見ると汚く見えますが、実際に印刷された場合はきれいに出力されます。
グレースケールの場合は薄墨のような表現になります。グラデーションは美しく出ますが、全体的にぼやけたカラーをグレー化したような印象になります。
グレースケールにするかモノクロ2階調にするかで印刷の仕上がりが違ってきます。どちらがよいかはその人の作品に合うかどうか、どのような原稿をイメージしているかによって違ってきますので、自分の好みに合わせて選択してみてください。
カラーモードに応じたスクリーントーンの処理が必要
原稿をグレースケールにするかモノクロ2階調にするかを決定した後に注意すべき点は、スクリーントーンの設定方法です。とくにモノクロ原稿を選択した場合、トーンのモアレが発生しやすくなるので注意が必要です。スクリーントーンがきちんと2値化している場合はドットが綺麗に出ますが、一つ一つのドットにアンチエイリアスがかかっている場合はモアレが起こります。
とくに線数の異なるトーンが重なっていたり、拡大縮小したり回転させたりした場合など、網点の使い方を間違えると別の模様に見えてきて、希望と異なった仕上がりになることがあります。これらを防止するには、元の設定のまま貼ることが大切です。レイヤーの階調設定をなしにし、透明度を変えないなど設定を2値化で統一させてください。
また、トーン塗りとグレー塗りを混在させた場合にも問題が生じます。2値化している場合はスクリーントーンのみの使用にしましょう。グレースケールモードの場合はこれらの設定を気にする必要はありません。ただし、グレースケール原稿の場合も機械の関係で、オンデマンド印刷でモアレが生じることがあります。
データの書き出し方法での注意点
基本的に入稿するデジタル原稿はPSD形式などを使用するため、元の作成原稿と違いレイヤーを統合した一枚のデータになっています。そのため元のレイヤー未統合の作成原稿と別に制作した方が安全です。業者によって異なりますが、トンボを書き出す必要があります。
断ち落としより外の部分は印刷されないので、隠しノンブルや作成者の名前、原稿名などを表示しておくと安全です。最初に設定した裁ち落とし線に合わせて裁ち落としの範囲を選択します。書き出しは、モノクロ2階調を選択した場合はモノクロ2階調(閾値)モノクロ2階調(トーン化)のいずれか、グレーを使っている場合はグレースケールを選択します。
出力形式はPhotoshopのPSDファイルが多いですが、会社によってはTIFFファイルを受け付けていることもあるので確認してください。JPEGは解像度が低く推奨していないところが多いので気をつけましょう。
書き出した後も正しく書き出されたかどうかのチェックをします。複数の端末を使って確認すると、見落としている所にも気付きやすくなります。
オフセット印刷とオンデマンド印刷
原稿の入稿方法には大きく分けて二通りあります。よくあるオフセットは、版を作って紙に転写するアナログ方式です。
一方、オンデマンドは版を作らずデジタルデータから直接印刷するデジタル形式のタイプです。版を作る必要がないので一冊から安価で作成することが可能です。
オフセットは細かい部分まで鮮明で高品質な仕上がりで、いろいろな紙を選択でき、アナログ原稿でも入稿できます。大部数なら割安になります。デメリットは、少部数での発行の場合高くつくということです。仕上がりまでに時間がかかるのも注意が必要です。また、オフセットはAMとFMがあり、FMの方がより精度が高い印刷になっています。
逆にオンデマンドは、少部数でも割安で即日仕上げも可能です。オフセットに比べると、ずれが起きたりモアレが起こったりしやすいので品質は劣ります。同人誌イベントまでに時間がないという場合はオンデマンド、100部以上前もって準備したい場合、または高品質な本を作りたい場合はオフセットを利用するとよいでしょう。
初期設定ミスにより、せっかく作った原稿が出す直前になって書き直しになったり、でき上がった本を見たらまったく別の印象になったりします。同人誌は印刷前の編集作業を自分で行うため、最初のうちは不慣れでミスも出やすいものです。ソフトの初期設定や原稿作成前の準備が、綺麗な原稿を作る第一段階になります。原稿作成前に必ず会社の指示に目を通しておくようにしましょう。