同人誌印刷の際にできるモアレとは?
同人誌の原稿を作っているときや業者に依頼したときに思った通りの姿に仕上がらないことも珍しくはありません。
生じ得るトラブルの一つとしてよく知られているのがモアレの発生です。
発生してしまう理由を理解したうえで、具体的にどんな対策をすればリスクを低減させられるのか、最終的に美しい同人誌に仕上げられるのかを確認しておきましょう。
原理的に発生し得る現象だと知ろう
原稿を制作しているときにパソコンのディスプレイ上で見ているときにはきちんと美しく描けているイラストも、プリントアウトすると何かおかしいという状況になってしまうことはあります。インクの性質やディスプレイの発色性能、用紙の性質などによって色合いが変わってしまうこともあるでしょう。
しかし、それよりもはっきりと目に取れてしまって問題になり得る現象が、本来はないはずの細かな縞模様が発生してしまうものです。これがモアレと言われている現象で、プリント方式の原理を考えると発生してしまうリスクがあることが理解できるでしょう。
同人誌を作るときには原稿を入稿した後、オフセット印刷で1ページずつ刷り上げていき、製本して冊子に仕上げるという流れが一般的です。この方法は製版をしてから刷り上げるのが特徴で、特に部数が多いときには単価が安くなりやすく、再現性も良いので高品質のものをたくさん生産できます。
平たく言ってしまえば凸凹がある版を作り、その上にインクをのせていき、そのインクを用紙に転写していくことでデザインがプリントアウトされていくという仕組みになっているのです。この際の凸凹という点になっていて、その点の有無によってインクがのるかどうかが決まります。
基本的には網目のように張り巡らされた点がデザインを作り上げていると考えると良いでしょう。点の密度が高ければ濃くなり、色違いにすれば色を変更できるということになります。
フルカラーの場合にはCMYKと呼ばれるシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの四種類の四つの点を組み合わせることで色を表現しているのが基本です。このような網点の並び方が問題で縞模様が発生してしまうことがあります。
規則正しく網点が配列してしまうと、まるでその並んでいる方向に線が引かれたかのように見えてしまう場合があるのです。目の錯覚を利用して美しいデザインに見せているのがオフセットの特徴なので、運が悪いとモアレが発生してしまうことになると考えていたほうが良いでしょう。
ただ、原因さえわかってしまえば発生確率を下げることはできるので、どのようなことを念頭に置いて制作を進めたら良いかを知っておくのが肝心です。
発生を未然に防ぐための方法を知ろう
プリントアウトすると色調がおかしくなるというような現象は自宅で試し刷りをしてみてもわかることがよくあります。しかし、網点の干渉によって起こるモアレについては版のサンプルを作ってもらわないとわかりません。
版を作らないと実際にはどのような網点ができるかがわからないので、干渉を起こしてしまうかを判断することはできないからです。版を作るのには自宅でプリントアウトするのに比べてかなりの費用も時間もかかるので、できるだけ未然に防げるようにしましょう。
網点が細かく入っているとそれだけ規則的に並んでしまうリスクが高くなります。基本的には細かなところまでこだわってイラストを仕上げるほど発生する可能性が高くなると考えておいたほうが無難です。
作り込まなくて良いところはシンプルに仕上げるように心がけるだけで版を作ってから後悔してしまうことは少なくなります。特に気をつけておきたいのがストライプ模様を使うときで、キャラクターのファッションに使用したり、薄く背景にストライプを施したり、画面効果を出すためにストライプを入れてみたりすることがあるでしょう。
もともとストライプは一直線上に網点を並べるものなので干渉を起こしやすい性質があります。格子状や網目状のデザインも同様で、細かいものほど発生リスクが高くなるので注意しなければなりません。
ストライプや格子、網目などのデザインは極力使わないようにするのが対策としては最も重要になります。使う場合にもできるだけ荒削りの状態にして細かい間隔で線を引かないようにするのが重要です。
また、画像処理をおこなったデータについてもモアレが発生しやすくなることがあります。ぼかしやトーン処理などのような画像処理をすると網点を規則的に取り除いたり追加したりしてしまうのが基本です。
すると規則的に同じ網点が並んでいる状況ができてしまい、版を作ってプリントしてみると干渉を起こして縞模様が見えてしまうということになりかねません。基本的には画像処理は不必要におこなわず、自分の手で直していくというスタンスで制作していれば問題にはならないでしょう。
もう一つ問題になるのがスキャナーなどでスキャンしたデータを使う場合です。手書きのイラストを使うというのは同人誌ではよくあることですが、手書き原稿であればあまり問題になることはありません。モアレが発生するリスクが高いのは、他の同人誌やポスター、チラシなどをスキャンしてそのまま使用した場合です。
この場合にはスキャン元になっているデータが網点でできていて、スキャナーはその網点を読み込んでいます。網点でできているデータの場合には手書きのデータをスキャンしてできた連続的なデータと違って、網点の規則性が高くなっているのが特徴です。
そのデータから版を作るとますます規則性が高まってしまうことになります。この対策にはさまざまな方法がありますが、最も有効なのは高解像度でスキャンすることです。
解像度の調節によって改善されることも多く、画質的に問題がないならバイキュービック法で解像度を下げてみるのも良いでしょう。また、画像処理によって対策することも可能で、アンシャープマスクを使ったり、ガウスの調整をしたりすると改善されることもあります。網点レベルまで拡大して見られる高性能の画像処理ソフトを使って、実際にどんな変化が生まれるかを見ながら画像処理をしていきましょう。
実際には業者と相談しながら修正しよう
モアレが発生してしまうのに気づくのは版を作ってサンプルを提供してもらってからということもよくあります。ただ、版を何度も作り直して試行錯誤をしていると時間も費用もかかってしまうのは確かです。
十分な対策をしたうえで業者に依頼をするのは重要ですが、それ以上に大切なのが業者と相談しながら対策をしていくことでしょう。業者が使用している班の製造機やプリンターの特性によって、どういうパターンのときに発生しやすいかも異なります。その経験とノウハウを持っている業者と相談しながら対策をしたほうがスムーズに合理的な形で進められるでしょう。
同人誌の印刷をしたときにモアレが発生してしまうことは珍しくありません。オフセット印刷をするときには網点を使用しているため、その干渉が起こってしまうと縞模様ができてしまうことになります。
原理的に起こり得るのは承知して、細かな作り込みを避けたり、ストライプや格子状のデザインの使用を控えたりして対策するようにしましょう。スキャンデータは高解像度にして必要に応じて画像処理をすればモアレを防止できます。
業者と相談しながらおこなっていくことで、何度も作り直さずに済むようになるでしょう。