同人誌を作るのが初めてな人がやってしまいがちなミスとは?
同人誌の原稿作成にはさまざまなルールやコツがあります。最初は呑み込むのが大変で、思いがけない間違いをしてしまうことも。初めて作る同人誌をできるだけ最高のものにするために、初心者が失敗しがちなポイントを紹介します。初めて作った同人誌はどんな人にも思い出深いもの。その同人誌が素晴らしいものになるよう、注意点を学びましょう。
同人誌の作成方法を学ぼう!
まず、同人誌を作るための具体的な流れを学びましょう。「同人誌を作るには、何から始めたらいいのか」という基本から、詳しく解説をします。
■1.デジタル入稿かアナログ入稿かを決める
同人誌の原稿には、「デジタル原稿」「アナログ原稿」の二種類があります。
・デジタル原稿
パソコンなどのデジタル機器で原稿を作成する
・アナログ原稿
紙に手描きで漫画を描く
昔はアナログ入稿ばかりでしたが、現在は同人業界もデジタル化が進み、多くの作家さんはデジタルで原稿を作成しています。現在は、アナログ原稿を扱わない印刷所も増えてきました。多くの選択肢から印刷所を選びたいのなら、デジタル原稿をおすすめします。
しかし、アナログ原稿では駄目ということではありません。作家さんの中には、漫画やイラストの下書きをアナログで行い、スキャナで取り込んでペン入れ・トーン貼りをする方もいます。どの方法が一番自分に合うか、試行錯誤してみましょう。
■2.印刷所を決める
次に、同人誌を刷ってもらう印刷所を決めましょう。同人誌の印刷所には数多くの種類があり、すべてに特徴・得意分野があります。仕上がりや料金も、印刷所によって違います。
印刷所をひとつずつチェックするのは大変なので、比較サイトで人気の印刷所・特徴を見て厳選するとスムーズです。印刷所を決める段階で、入稿&製本方法を決めておくことも重要。印刷の申し込み方には、二通りの種類があります。
・印刷通販型
原稿が仕上がった後に印刷所に連絡、印刷をお願いする方法です。好きなタイミングで入稿できるため、「自分のペースで原稿を描きたい」「時間に追われたくない」という方にぴったり。ただし、夏コミや冬コミといった大規模イベントの場合は、予約を入れないと刷ってもらえなかったり、入稿できても割高になったりすることもあります。どうしても予約が優先になるため、飛び込みの入稿は納期が遅れることも。
・予約型
あらかじめページ数を決め、印刷所に予約を入れておく方法です。必ずしも予約必須ということではありませんが、「大規模イベントの際は予約をお願いしたい」という印刷所が多いです。予約を入れれば必ず印刷してもらえるので、メリットは大きいです。しかし、期日までに入稿することが必要。スケジュール管理がより重要になるでしょう。また、予約段階である程度の仕様を伝えるので、後から大きな修正は難しいです。
■3.印刷の仕様を決める
同人誌の仕様は自由。自分で好きな仕様の本を作ることができます。具体的にいうと、下記のことはすべて自分で決められます。
・同人誌のサイズ(文庫サイズも作れる)
・ページ数
・ページや表紙にどんな紙を使用するか
・フルカラー表紙の発色
・カラー口絵を付ける
世界でただ一つ、自分だけの同人誌を作ることができますよ。
ただ気を付けたいのは、同人誌は仕様が大掛かりであればあるほど、高い印刷費がかかることです。お財布と相談したり、印刷所の早割キャンペーン&セット割を使ったりして、上手に節約しましょう。印刷所に予約を入れる場合は、最初に仕様を決めておく必要があります。最初に「こういう形にする」と決めて、執筆に入りたいですね。
■4.原稿を執筆する
印刷所と仕様が決まったら、いよいよ同人誌の執筆作業です。原稿を描く前に、印刷所がHPで公開している原稿作成方法・注意点を確認してください。とくにデジタルの場合は、解像度をチェックしてから作業に入りましょう。
「カラー」「グレースケール」「モノクロ」で、推奨されている解像度も異なります。また、「本文より先に表紙の入稿が必要」というセットもあるので、優先順位を決めて作業を進めましょう。
■5.原稿執筆が終わったら入稿へ!
執筆が終了したら、印刷所に入稿です。入稿前に、原稿の仕様がきちんと守れているか、ページの順番は間違えていないか、抜けがないかを確認しましょう。
■6.印刷代を支払う
本が仕上がると、自宅もしくはイベント会場に納品されます。印刷代の支払い方は、印刷所やキャンペーン&セットにより異なるので、最初に確認しましょう。
支払う流れとしては、以下2つの方法が多いです。
・本と一緒に支払い用紙が届き、決められた日までに振り込む
・印刷前に入金する前払い
支払い方法は、クレジットカード決済や銀行振込、コンビニ振込、代引きなど多彩。スムーズに支払える方法を選択しましょう。
同人誌を作るのが初めてな人がやってしまいがちなミスとは?
同人誌の作成には、いくつかの注意ポイントがあります。初心者が失敗しがちなポイントをまとめてみました。原稿を描く前に、以下の点を間違わないようチェックしてくださいね。
■原稿の解像度が低い
デジタルで原稿を制作する時は、解像度に気を付けてください。カラー原稿でもモノクロの原稿でも、印刷所が推奨している解像度にしないと、印刷したときにぼやけます。せっかくのイラストも文字も、台無しになってしまいます。
かといって、解像度が高ければいいわけでもありません。解像度が高いとデータが重くなり、印刷所から断られることも。やはり、推奨されている解像度がベストです。執筆前に必ず解像度を確認しましょう。
■公式の著作権への配慮(とくに二次創作)
同人誌は、漫画やアニメの二次創作が非常に多いです。二次創作の場合、同人誌に登場するキャラクターやロゴの権利は、公式側と原作者にあります。そのキャラクターで二次創作をする時は「ファンアート」の範疇を越えてはいけません。
「どこがNGなのか」は、ジャンルによって異なります。が、原作のロゴを使用するなど、明らかな盗用はご法度。無断転載や複製も絶対にNGです。同人誌のルールは日々変化しているので、アンテナを張っておく必要があります。
■成人向け(18禁)に関する注意
同人誌で成人向けの作品を発表する場合は、必ず参加するイベントの注意点をチェックしてください。成人向け作品の取り扱いは日々厳しくなっています。コミケをはじめとする同人誌即売会では、開場前に見本誌のチェックを行います。販売してよい内容かどうか、スタッフがきちんとチェックするということです。
ここでNGが出ると、対象となった本の販売ができなくなります。せっかく描いてイベントに間に合わせたのに、勿体ないですよね。成人向け作品に関しては、事前に他の作家さんの本で表現の範囲を学び、かつイベントのマニュアルを何度も読みましょう。また、成人向け作品に関する規定は、今後もさらに変化すると予想されます。常に最新の知識のアップデートを心がけてください。
■ノンブル(ページ番号)の入れ忘れ・入れ間違い
同人誌の原稿には、ノンブルと呼ばれるページ番号を入れなくてはいけません。印刷所は、そのページ番号順に印刷をして、一冊の本に仕上げます。ノンブルを入れ忘れると、印刷をしてもらうことができません。
また、ノンブルを打ち間違えた場合は、ページの順番を間違えたまま印刷されます。これでは乱丁本を販売することになってしまいます。入稿の前に、きちんとノンブルが入っているかどうか、ページ順に数字が並んでいるか確認しましょう。
■奥付を入れ忘れる
同人誌を作る作家のマナーとして、「最後のページに奥付を入れる」というものがあります。奥付は最後のページに載せるもので、以下の内容を明記することがよしとされています。
・サークル名
・作家の名前(ハンドルネーム)
・発行年月日(初売りのイベント日)
・発行した作家の連絡先(メールアドレス)
・印刷所
なぜ奥付が必要なのかというと、問題が起きた時の責任の所在を明らかにするためです。さまざまな権利問題が絡む
同人誌は、「本を出すことで起きる責任のすべては、作家自身にある」と表明する必要があります。それが奥付です。印刷所の中には、「奥付のない原稿は印刷できない」と明記しているところも。必ず奥付のページを作り、必要事項を明記しましょう。
同人誌の印刷会社はどう選ぶ?
同人誌の印刷所は非常に数が多く、それぞれ得意分野や個性も異なります。多数の印刷所の中から、自分に合った印刷所を選ぶにはどうしたらいいのでしょう?ポイントを解説します。
■口コミを検索してみる
よい印刷所を探すには、口コミのチェックも重要です。「対応がよい」「印刷がキレイ」「お得なセットがある」などの印刷所は、同人作家さんの間でも大人気。SNSで活発な意見交換もされているので、さまざまな媒体で口コミを探してみてください。よい評判だけでなく、悪いところもしっかり調べましょう。
■初心者は少部数のオンデマンド印刷がオススメ
初めて同人誌を出すときの大きな悩みのひとつに「発行部数」があります。「一体何部すればいいの?」という課題は、熟練の作家さんでも抱える悩みです。初心者なら、とくに悩みますよね。同人誌は、部数が多ければ多いほど費用も高いです。「たくさん刷ったのに余ってしまった」という損をなくすためにも、100部以下の小部数から始めてはいかがでしょう。
100部以下の少部数だと、オフセット印刷ではなくオンデマンド印刷になります。オンデマンド印刷とは、高い性能のプリンタで出力し、本を作るというもの。費用も安めなことが多く、初心者にはぴったりです。
「まずは作品を形にしてみたい」「自分の原稿が本になっているのを見たい」という方に、おすすめしたい印刷方法。ぜひお試しください。
■最初は少部数で印刷仕上がりを見る
初めて同人誌を印刷する時は、少部数からにすることをおすすめします。「最初からたくさん売るのは難しい」ということもありますが、「自分の漫画が本になった時、どうなるのか」をチェックすることをおすすめします。実際に同人誌を印刷してみると、さまざまな気づきがあります。
まず、とくに「パソコン(またアナログ)で描いた絵と、印刷された絵の印象が違う」という失敗談は後を絶ちません。原因はさまざまですが、このような失敗から試行錯誤を重ねて、理想の同人誌に近づけていくことが必要です。
また、本文にどんな紙を使用するかによっても、漫画の印象はぐっと違ったものになります。線の太さやベタの多さによって、「本文にどの紙を使用するか」も違ってきます。こちらもいろいろ試したいですね。
100部以下だとオンデマンド印刷になるので、同人誌で一般的なオフセット印刷を始めたいなら、100部がオススメ。最近は、低料金で試し刷りをしてくれる印刷所も出てきました。このようなサービスを利用してみるのも手です。
まとめ
同人誌の原稿作成にはさまざまな決まりがあり、最初は戸惑うかもしれません。しかし何度か作ってみると、だんだんとコツが身についてきます。回を重ねるごとに、失敗は少なくなっていくはずですよ。原稿作成での解らないことは、印刷所に訪ねてみるとよいでしょう。そのためにも、単純に印刷の技量のみではなく、「相談しやすさ」「回答の早さ・丁寧さ」をふまえ、印刷所を選ぶことが大事です。お気に入りの印刷所は、同人誌執筆の大きな味方になってくれるでしょう。