同人誌は自費出版と何が違う?それぞれのメリット・デメリットを確認!
同人誌と似たものに自費出版という選択肢があります。同人誌と自費出版は何が違うのでしょうか。大きくは出版社を通すかどうかという点で、作り方から流通の方法まで、同人誌と自費出版は異なる点がいろいろあります。それゆえ、メリットとデメリットもあるので、今回はその辺りに焦点を絞ってまとめてみました。チェックしてみてくださいね。
同人誌のメリット
同人誌は自費出版と違って、出版社を通さないで出版されるところにメリットがあります。そもそも同人誌は、同じ趣味を持つ人たちの間で創作したものを交換し合うという場から生まれた書籍であるという性質があります。
売上と利益が求められる商業出版による書籍と違い、同じ趣味を持つ人たちの間の創作活動の結果を広く交換し合うところに主たる目的があるため、当然、同人誌は著者本位で出版されるという点が特徴になります。著者本人の意向が出版に関して最優先されるのです。それでは、出版社を通さないで出版されることのメリットとは、具体的にはどんなことが挙げられるでしょうか。大きなところを挙げてみます。
■自分の趣味を心置きなく投入できる
出版社を通して出版される自費出版だと、出版する書籍の内容は出版社の編集者と相談しながら決めていきます。もちろん編集者の意向もあるため、著者の希望がそのまま100%通るとは限りません。何かしら編集者からの注文に応えなければならないところも出てくるでしょう。
同人誌の場合は、そういうことはなく、法律や公序良俗に違反しなければ、著者が好きなように構成して編集できます。自分が誌面を割きたいところや見せたいものを、誰からも意見されることもなく、そしてそういうことにいちいち耳を傾けることなく、心置きなく表現できます。そういった自由度が同人誌にはあります。
そして、自分の趣味を理解しているかどうかもわからない人に、自分の趣味をさらけ出す必要もありません。中には、知らない人に自分の趣味をさらけ出すことに抵抗を感じている人もいることでしょう。同人誌であれば、頒布するまで自分の中で作ることができ、同じ趣味を持つ人が集まる頒布会でのみ売ればよいのです。
■頒布会で同じ趣味の人と交流できる
同人誌を書いている人が集まって、お互いに同人誌を売る頒布会というイベントがあります。有名なところでは「コミックマーケット」が挙げられるでしょう。同じ趣味を持つ人が一堂に会して同人誌を売ったり買ったりするのです。そういう場では、同じ趣味の人と出会うことができるのが大きなメリットです。
日常的にはなかなか同じ趣味を持つ人に会うことがない人でも、頒布会に来ればそういう人と出会える機会が多くなります。自分では同人誌を書かずに買いに来るだけの人もいますが、自分で同人誌を書いていれば、ブースを出して同人誌を介して同じ趣味の人を呼び集めることができます。
そこで出会った人たちとの人脈が広まり、さらなる趣味を同じくする人が増えていくのです。応援している作家さんや好きな作家さんと直接会えることもあるため、コミケは趣味人の戦場と呼ばれることもあるようです。このような交流は、書店を通じて販売される出版社経由の自費出版の本では、なかなか得られない機会ではないでしょうか。
■自分の冊子を作る楽しみが得られる
前にも書きましたが、同人誌だと本の編集に関わる一切を自分で仕切ることができます。どういう構成にするか、どんな表紙を付けるか、どう書いたらファンの人たちが喜んで手に取ってくれるかということを想像しながら作っていく創作の楽しみを得られます。
また、同人誌の頒布会では、ゲットした同人誌は戦利品と称され、買ってくれた人が家でじっくり堪能してくれるため、それが作り手にとっても作り甲斐になっていくのです。ネットで気軽に人と会える時代でありながら、同人誌を通じて人がつながっていくのはコミケ文化の独特なところでしょう。
同人誌のデメリット
一方で、同人誌にもデメリットはあります。なんといっても、やはり1冊の本を自分一人で作り上げるということで、作業量が膨大になるためです。しかも、創作活動の一環なので、なかなか手を抜くこともできないと思います。印刷作業や製本作業、材料の手配などを考えると一人でこなすのは楽しい反面大変です。自費出版と違って出版社に依頼しないために、これらを自分で工面することになります。前にも書いたように、自分と同じ趣味を持つ相手に買ってもらうためと思えばやる気も起こりますが、
一方、予定している頒布会までに間に合わせなければならないとなると、綿密なスケジュールを組んで、着実に進めていかないと厳しいところもあります。社会人が趣味としてやるなら、なおさら仕事の合間を縫ってコミケという納期を守れるように調整が必要です。自費出版は多少出版の時期がずれてもよいですが、同人誌は予定している頒布会までに間に合わせることが必須になります。そういうところは、デメリットといえるかもしれません。
自費出版のメリット
自費出版のメリットは、本のでき上がりまでを出版社が行ってくれることです。編集者やデザイナーがいて、印刷会社もいるため、自分は内容に専念できます。自費出版という言葉の響きから、「自分がすべての工程を行わなくてはならないのか」と思う人もいるのですが、そこは安心してください。編集、印刷、製本は専用の機器や知識がないと上手くいかないこともあるので、プロに任せられるのは嬉しい点です。
そして、ISBNという出版コードが付くと「本を出版した」という実績が得られるのも、特徴の一つといえるでしょう。コードをつけることで全国の書店に流通させるだけではなく、国立国会図書館に置いたりすることもできるのです。このように、後世に残せるものが欲しいからという理由で自費出版による本を出版する人もいるそうです。このような格式の高い形での足跡を残せることは、自費出版の大きなポイントといえそうです。
自費出版のデメリット
自費出版のデメリットは、出版費用が高いことや、利益を得るのに時間がかかることです。出版にあたって、いろいろな人が協力してくれる反面、やはりコストも掛かります。そして、なかなか本が売れない時代ゆえ、なかなか本の売り上げから利益を得られるようになるには時間が掛かるでしょう。書店の店頭に置いてもらえるかどうか、というところからの勝負になります。
さらに、時には詐欺被害に遭うこともあるようなので、出版社を選ぶ際は信頼できる会社かどうかをよく検討した方がよさそうです。出版のプロが力を貸してくれる自費出版ですが、すべて自分の意思と段取りで話を進めていく同人誌とは違う難しさがある点は注意が必要でしょう。同人誌のノリで自費出版に挑戦することはできないといえそうです。
同人誌と自費出版のメリットとデメリットをまとめてみました。同人誌は利益というよりも同好の友との交流がメインになっており、自分の趣味を表現すると共に、同人誌を通じて人とつながっていくことに大きな喜びを感じられる出版形態です。一方の自費出版は、プロの手を借りながら本を書くことができ、格式高いところはあります。ご自身の目的によっても変わってくるところですが、両者の違いを理解しておくことは大事でしょう。