束見本って何?必ず作らないといけないの?
普段の生活ではあまり聞くことのない「束見本(つかみほん)」という言葉をご存知でしょうか。束見本は、冊子や書籍を制作する際に非常に役に立つアイテムです。そこで、この記事では束見本の概要や、同人誌制作において必要か否か、作成する際の依頼先について紹介します。同人誌の制作を検討している方は、ぜひご一読ください!
束見本(つかみほん)って何?
束見本(つかみほん)とは、主に書籍を制作する際に、事前に表紙や見返し、本文、口絵、扉絵など本番のときと同じ用紙を使用し、印刷を行わずに白紙のまま製本したものです。簡単にいってしまうと、「印刷を行っていない製本サンプル」のことです。束見本は印刷する前の状態で製本だけを施したもので、本の束(厚み)や重さなどを正確に把握する際に役立ち、実際に仕上がった際のイメージも確認できます。
■束見本の利用例
束見本はどのようなシーンで利用できるのでしょうか。利用例については以下のとおりです。
・新たに冊子・書籍を発行したいが違う用紙にすると、どれくらいの重さや厚みになるか、ページをめくった際の感触や手触り感などがそれぞれ異なるため、そのことを前もって確認しておきたい
・印刷を行う前にクライアントなどに仕上がり具合を事前に確認してもらい、印刷の後にイメージと違うといったリスクを回避したい
上記の利用例はほんの一部ですが、このような場面で束見本の必要性が感じられるでしょう。また、冊子・書籍に特殊な紙を使用する場合や、大量部数の印刷を検討している場合などには、一度束見本を作成して確認してみるのをおすすめします。
■束見本は何冊必要?
束見本は1種類だけで制作するよりも、違う紙を使って同じサイズ、ページ数で2~3種類程度作るケースが多いようです。その理由としては、束見本を1種類ではなく、違う紙で複数一緒に作成することによって、どれがその冊子・書籍に一番適した厚さ、重さ、感触なのかを判断できるからです。
■束見本を作成する際に意識すべきポイント
束見本を作成する際に、主にどのような部分をチェックすればよいのでしょうか。以下の要点を意識して作成することで、より効果的に束見本を活用できます。
・重さ・厚さ:冊子・書籍のページ数によっては用紙の重さや厚さに大きな違いが生じる可能性があります
・感触:ページ数によって、冊子・書籍のページをめくる際の感触や手触り感が異なるのです
・用紙の色味:用紙には白の紙を使用することが多いですが、紙の種類によっては「白」と記載されている用紙であっても、想像している色味と異なる可能性があるため注意しておきましょう
・光沢度:印刷用途によって、光沢度がどのくらい必要か、あるいは不要かがそれぞれ異なってくるため、確認を行います
・価格:冊子・書籍に使用する用紙の種類によって、束見本を作成する価格も変わってくるため、1部あたりを作成するコストを考慮し、用紙の銘柄を考えていきましょう
同人誌を作るなら束見本も必ず作るものなの?
さまざまな目的で作成される束見本ですが、同人誌制作において必ず作る必要があるのでしょうか。結論からいうと、同人誌制作に束見本を用いることで、より完成度の高い同人誌を作成することが可能です。
ここでは、同人誌制作をするうえでの束見本の作成例について紹介します。
■ブックケースを作る場合
「ブックケースを作成したものの、本が厚すぎてケースに収まりきらなかった」なんてことがあると困ってしまいますよね。しかし、事前に束見本を作成して正確な本の厚みを測っておくことで、このような失敗を未然に防止できます。1つのケースに2冊の本を収納する場合には、束見本を2冊作成するようにしましょう。ブックケースの穴を下に向けた際に、本が自然とゆっくり落ちてくるのがブックケースの理想のサイズとなります。
束見本をもとにケース用の型を作成していくため、ページ数・部数・紙などの冊子の仕様は、ブックケースの締め切りよりも早く決めておく必要があります。仕様が確定した後にページ数が増えてしまうと、ケースに収まりきらなくなってしまう可能性があるため注意してください。
反対に、ページ数が減ってしまっても、ケースの幅に余裕ができてしまい、すぐに本が抜けてしまいます。ブックケースを作成する際に束見本を作成する場合には、冊子の仕様確定後に束見本を作成するようにしましょう。
■フィルムカバーを作る場合
フィルムカバーを作る際にも、束見本は非常に役立つため、作成することをおすすめします。フィルムカバーは、背や袖の部分に「スジ押し」を行う必要があるため、事前に束見本を作成しておき、正確な本の厚みを測るようにしましょう。「スジ押し」とは、紙やフィルムにスジを入れ、折り曲げやすくする加工のことです。フィルムカバーについてもブックケースと同様、カバーの締め切りよりも早く冊子の仕様を確定する必要があります。
■背幅を確認する場合
本文用紙の紙厚は一般的には0.65~0.20mm程度ですが、使用する紙の枚数が多ければ多いほど、「0.01mm」が大きく影響し、紙厚からの見込計算と実際の背幅の差が広がってしまい、その差が数mmに及んでしまう可能性があるため注意しておきましょう。そのため、1,000項以上の分厚い本を作成する場合には、実際の製本ラインで作成した束見本から、実際の背幅を測定する必要があります。
■ページの開きやすさを確認する場合
冊子・書籍のノドに近い位置まで絵柄が挿入されることが想定される場合などには、事前に束見本を作成して、ページの開きやすさを確認できます。ページ数が多くなることが予想されるアンソロジーや総集編などを制作する場合には、束見本を作成することがおすすめです。
束見本の作成を依頼するには?
「束見本を作成していけど、初めてで依頼主に何を伝えたらいいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。最後に、束見本の作成を依頼する際に意識すべきポイントについてお伝えします。
■冊子仕様確定のポイント
製本機やその機械の設定によって、本の仕上がりは大きく変わっていきます。そのため、背幅などの寸法が重要となる束見本は、本生産時と同じ製本機を使用して作成しましょう。本生産の発注によって、使用する製本機を決定するため、束見本作成時までに、事前にページ数や部数など冊子の仕様を確定させておくようにしましょう。
■入稿スケジュールを伝える
当初の予定から入稿が大幅に遅れてしまった場合、本生産時に同じ製本機の予約が取れず、その結果、束見本と仕上がりが変わってしまう可能性もあるため、本生産を含め、確実な入稿スケジュールを伝えるようにしてください。
■サイズを伝える
作成したい冊子・書籍のサイズがA4サイズなのか、B5サイズなのか、さらに、綴じる側は長辺なのか短辺なのかを依頼する際に伝えるようにしましょう。また、規格外のサイズであっても対応してくれる場合があるため、その際には本の詳細なサイズをお伝えください。
まとめ
この記事では、束見本の概要や、同人誌制作における束見本の利用例、作成を依頼する際のポイントについてまとめて紹介しました。束見本を活用することによって、事前に本の重さや厚みなどの仕上がりを確認できるため、本番の本の完成度をグッと引き上げることが可能です。束見本に興味を持ったという方は、ぜひ一度作成を検討してみてください!