同人誌印刷はオーダーメイドで発注できる?
専門業者に同人誌を印刷してもらうときには、理想的な形に仕上げるため細かなところまで全て指定した通りにしてもらえたら良いと考えるのはもっともなことです。
オーダーメイドで発注することはできるのでしょうか。
業者がどの程度までなら融通を利かせてくれるのかを理解しておき、どんな点を交渉すると良いかを見極められるようになりましょう。
一般的にはメニューとテンプレートが決まっている
同人誌を主に取り扱っている業者はコンセプトとして比較的少ない数十部から数百部という冊子の印刷をリーズナブルな料金でおこなえるようにしているのが通例です。安かろう悪かろうになってしまわないように、それでも高い品質を維持できるようにしています。
また、できる限りフレキシブルに注文に応えられるようにさまざまなサービスをしている業者もあるのは確かです。ただ、一般的にはオーダーメイドでの注文には対応していないのが実態で、基本となるメニューとテンプレートが用意されています。
メニューが決まっているのは料金を明確にして明朗会計にし、他の業者と比較検討してもらいやすくするという狙いもあるのは確かです。それ以上に重要なのがパッケージ化することでユーザーがあまり悩まなくても発注できるようにしつつ、社内での作業フローもわかりやすくすることができることでしょう。
特に作業が明確になると効率が上がるので安く制作できる可能性が高まります。低価格化を目指すためのメニューという考え方をするのも妥当で、メニューの中で内容がしっかりと決まっていて自由度が低いと安上がりになる傾向があるのも確かです。
冊子を作るときにはA5やA4、B5などのサイズと用紙の種類を選ぶことができ、色についてもフルカラーや単色、二色刷り、24色対応などさまざまな選択肢があります。綴じ方も一様ではなく、無線綴じにすることもできれば中綴じや折綴じ仕様にすることもできるでしょう。このような要素を全てひとまとめにしてしまうことで利便性を高めているのです。
しかし、実際には表紙はフルカラーで中身は二色刷りが良い、最初の20ページはフルカラーでそれ以降は単色にしたいといったように細かく決めたいこともあるでしょう。表紙と中身は仕様を違うものにしたいという要望がしばしばあることから、業者によっては対応するメニューが存在しています。しかし、中身の色をページによって変えるような対応はせず、一律でフルカラー対応とされてしまうのが通例です。
また、用紙についても同様でA5などの典型的なサイズではなく、この大きさにしたいという要望があるかもしれません。メニューの中にサイズをオーダーメイドにするようなものはほとんどなく、対応してもらうのは難しくなっています。
この他にも間に切り取り線の入ったページを入れてアンケートを取れるようにしたい、袋綴じを入れてみたい、1ページだけキャラクター型に切り抜いたものを入れて欲しいといった希望もあるでしょう。しかし、このような特殊なオーダーに応えてくれるようなメニューはあまりないのが実態です。
また、テンプレートも決まってしまっていて、それを使った原稿でないと受け付けてくれないこともあります。基本的には綴じるため、印刷ミスを防ぐためなどの余白が指定されている他、実際に開いたときのページの中心がどこになるかを見やすくしてある程度のものです。
提出可能なサイズとファイル形式になっているのでテンプレートを使えば安心なのは確かでしょう。しかし、逸脱が許されないので、ページの隅ぎりぎりまでイラストを入れたいというようなときには困ってしまいます。
テンプレートが決まっていることで業者としてはルーティンで印刷作業ができるというメリットがあり、コストダウンにつながっているのも事実です。ただ、それが原因で期待しているような仕上がりにできないこともあります。
完全にオーダーメイドで対応してくれるのか
メニューには適切なものがなかったり、テンプレートに従いたくなかったりするような場合にも業者が完全なオーダーメイドに対応してくれれば問題はありません。オーダーメイドでの印刷をしてくれるかどうかは業者次第で、薄利多売によって利益を得ようというビジネスモデルを持っている業者ではあまり対応してもらえないのが実情です。
顧客の細かな要望に応えようとすると人件費もかかり、作業をする際にも打ち合わせの内容をよく知っている人に担当してもらわなければなりません。現場で作業をしているのはルーティンの作業しかしないアルバイトばかりというケースもあり、そのような個別対応ができる体制が整っていない業者も多いのです。
特に料金の安さをセールスポイントにしている業者の場合には人件費を削減している傾向があり、柔軟に希望に応えられるようにするための人的基盤ができていないことがよくあります。
しかし、業者の中には品質重視で多少のコストをかけてでもより良いものを仕上げようという方針を立てているところも少なくありません。このような業者ではそもそも料金メニューを作っていないことも多くなっています。個別に相談して見積もりを出すというスタンスになっていて、原案は出すけれど基本的にはオーダーメイドという対応になっているのが一般的です。
業者側にコスト的な負担がかかってしまうのは確かなので、単価は高くなってしまう可能性があります。しかし、かなり無理なお願いをしても何とかしてくれるので、理想を追い求めるうえでは強力なサポーターになるでしょう。
交渉できるのはどんなところなのか
もともとフルオーダーメイドを基本としている業者の場合には単価が高くなりがちなことに加え、最終的な仕様を決めて見積もりを取ってみるまでいくらかかるかわからないという心配も生じます。同人誌を安く作りたいと思っているときには問題になってしまう点なので、中道を取るような解決策がないかも考えてみるのが大切です。
メニューが決まっている業者でもセミオーダーメイドに対応しているところがあります。かなりの範囲がオプションになっていて、カスタマイズしたうえで発注できるようになっています。
このような柔軟性が高いサービスを提供している業者の場合には、他のメニューを選ぶ場合であったとしても交渉が成立する可能性が高いでしょう。基本となっている作業プロセスから逸脱することになっても滞りなく印刷できる体制が整っていると考えられるからです。
どのような範囲でなら交渉が可能かはケースバイケースですが、メニューに記載されている内容は自由に変更できると考えておいて良いでしょう。また、オプションに挙げられているものも自由に組み合わせることが可能です。
たまたま希望の条件が組み合わさっているメニューがないという場合には、その組み合わせで対応してくれないかと聞けば承諾してもらえる可能性が十分にあります。逆に難しいのはメニューに一切の言及がない部分で、1ページだけ特殊な仕様にしたいようなときに対応してくれるかは業者の判断次第です。
オーダーメイドで理想的な同人誌を作り上げて欲しいと考えるのはもっともなことですが、大抵の業者では価格を下げるために料金メニューとテンプレートを用意しています。メニューによって指定できる用紙や色などが決まってしまうため、フルオーダーメイドにするのは難しいのが一般的です。
ただ、価格よりも品質を優先している業者であれば柔軟に対応してもらえます。それでは単価が高過ぎるというときにも、比較的安い業者に希望の条件を提示して交渉してみるのが大切です。