同人誌印刷では和綴じも可能?自分で作る場合はどうやるの?
同人誌とは、同人雑誌略であり、個人や団体、サークルなどで同じ考えや趣向を持っている方たちが作成する雑誌や本のことを指します。そして、編集社を介さない状態で執筆や雑誌の発行ができることから、自由な表現ができるという点が特徴です。そこで本記事では、同人誌を和綴じで作成する方法について解説します。
和綴じとは
プロの漫画家や作家として活動し、仕事として成立させることは非常に狭き門であることが現状です。そのため、漫画家や作家を目指すすべての方が、将来的に夢を叶えることは難しいでしょう。また、漫画や小説を描く人の中には、趣味として活動したいと考える方も一定数います。しかし、ただ漫画を描くだけで誰の目にも触れないのは、寂しく感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで、同人と呼ばれる同じ考えや趣向を持つ人たちが集まって創作活動を行い、同人誌という冊子を製作する活動が存在します。また、漫画との最も大きな違いは、表現の自由さにあります。たとえば、漫画を世に出す際は、漫画家が特定の出版社に所属して制作を行い、商業誌として出版します。
つまり、漫画は、漫画家がストーリーや絵の構成を考えつつ、出版社の意向や編集者の指示に従わなければならないことがあるのです。出版社としては、製作費をかけて出版した漫画が、読者に購入されて初めて利益を生み出します。そのため、多くの方に受け入れられ、利益を生み出せる作品かどうかが重要となってくるのです。
ただし、漫画は出版社が広告費や製作費をすべて負担するため、製本過程で漫画家が費用を負担する必要はありません。一方、同人誌の場合は、個人やグループ、団体などが同人誌の制作にかかる費用をすべて負担する必要があります。また、漫画は街中でよく見かける書店に置かれるのに対し、同人誌が書店に置かれることありません。
一般的にコミケと呼ばれる同人誌の販売会やインターネットでの個人売買が主な流通経路となります。そのため、同人誌は漫画のように利益を生み出すことも難しいのでしょう。したがって、同人誌の場合は製本にかかる工程でお金をかけることができないのが事実です。もちろん業者に依頼すると綺麗に仕上げることができますが、1冊かかる費用を考えると同人誌ではハードルが高いといえます。
さらに、業者に依頼する場合、何冊以上からという制限が設けられていることも珍しくありません。つまり、販売冊数があまり見込めない同人誌の製本を業者に依頼してしまうと、コストオーバーや在庫過多になってしまう可能性があるのです。そこで、同人誌の製本では、個人で製本することをおすすめします。
個人で製本する場合、さまざまな方法がありますが、伝統的な製本技術である和綴じを検討してみるとよいでしょう。古びた古本屋の置かれている昔の本で、和綴じを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
和綴じとは、中国から伝来した製本技術であり、糸を使用して本を綴じる手法です。綴じ方にはさまざまは種類がありますが、本の外側に糸が見えていることが見た目の特徴です。日本の古き良き伝統を感じられるレトロな見た目の同人誌になることに加え、ページ数が増えても頑丈に綴じることが可能です。
和綴じのメリット
平安時代に中国から伝来した和綴じ技術は、日本に技術が持ち込まれて以降、独自の進化を遂げています。そして、昭和になると印刷技術が入ってきたことで、和紙の人気は衰退してしまいます。
しかし、和綴じの人気は衰えず、製本には主に和綴じが用いられていました。ただし、現在では、機械技術が発達し、スピーディかつ効率的に製本できる糊を使用した製本方法が主流となっています。
また、江戸時代に入っても和綴じの人気が維持されていたのには、和綴じにしかない魅力があるからです。たとえば、和綴じはどのページを開いても平たく本を開くことができます。たとえば、糊付けで製本された分厚い教科書や辞書を開く際、端っこのページが開きにくいと感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
一方、和綴じはページ同士を糊付けしていないため、どのページを開いても平たい状態になり見やすいのです。また、本のページを追加したい、糸が切れてしまったという場合、和綴じの場合は簡単に修正できる点も、和綴じならではの魅力です。
和綴じの種類
日本で独自の進化を遂げてきた和綴じの技術は、糸を使用して本を綴じることには変わりありませんが、さまざまな綴じ方が生み出されています。たとえば、最も簡単な綴じ方に、四の目綴じという方法があります。四の目綴じは、本に4か所穴をあけ、端にある穴から順番に糸を通すだけのシンプルな方法です。
そして、もう少し凝った方法で綴じてみたいという方には、康煕綴じがおすすめです。康煕綴じは、四の目綴じの綴じ方と主に同じですが、四の目綴じを行った後の本の角の部分をさらに装飾する方法です。康煕綴じをすることで、本の端っこがめくれなくなり、かつ見た目が美しくなります。
次に、綴じた糸が亀の甲羅の模様に見えることから名づけられた、亀甲綴じという方法もあります。亀甲綴じをする場合、康煕綴じや四の目綴じよりも穴の個数が多くなることに加え、近い感覚で本に穴をあける必要があります。そのため、紙の強度によっては破れてしまうこともあるため注意しましょう。また、穴の配置が見た目に大きく影響するため、バランスを考えながら進めていくことも大切です。
そして、最も優雅な見た目になる麻の葉綴じは、康煕綴じの応用として用いられる手法です。まず、康煕綴じを行い、さらに5か所の穴を追加して綴じると麻の葉綴じが完成します。見た目が美しいことはもちろん、本をしっかりと固定するため耐久性の向上にもつながります。そこで、長く保存しておきたい本には、麻の葉綴じをしてみるとよいでしょう。
自分で和綴じを作るには
自分で本を綴じるということは経験したことがない方も多いのではないでしょうか。そのため、和綴じの種類を紹介されても、イメージができずに難しそうな印象を抱く方も少なくないでしょう。しかし、和綴じは平安時代にも用いられていた技術であり、当時でも簡単に調達できるシンプルな材料が特徴です。
そのため、本を綴じるという経験のない方でも挑戦ができます。まず、和綴じで製本を行い際に準備するものは、基本的にたった4つです。和綴じに使用する糸と針、本になる表紙部分の紙とページを構成する紙を用意しましょう。和綴じに使用する糸は、ある程度の太さがあり、強度が重要です。練習の場合は刺繍糸でも問題ありませんが、正式に製本をする場合は、太さのある絹糸がおすすめです。
また、表紙と裏表紙にあたる、ページを挟む紙も丈夫さが重要です。そのため、厚紙などを使用して強度を確保するとよいでしょう。そして、準備物が揃ったら、綴じたい種類を選択して綴じる工程に移ります。つまり、難しいとイメージされがちな和綴じですが、シンプルな材料で本を綴じることができるのです。
同人誌は、出版社を介さずに本を製作できるため、自由な表現ができることが最大の魅力です。しかし、同人誌としてコミケや個人売買などで販売を行う場合、基本的に個人やグループ、団体など同人誌に関わる人だけで費用を負担して製本する必要があります。しかし、予算や販売予定数によっては業者に頼むとデメリットが多くなってしまいます。そこで、和綴じという方法を利用して、個人で製本することをおすすめします。