同人誌を印刷所で作るときの流れ
同人誌の作成はプリンターを用いれば個人でも十分可能ですが、やはり専門の技術と機器を持った印刷所によるプロの仕上がりには敵いません。
印刷所では同人誌向けのプランを提供しはじめ、高レベルな仕上がりの本をよりリーズナブルな料金で作成することが可能となり、商業誌に匹敵するような作品を作り出す同人作家やサークルも増えています。
もくじ
同人誌の印刷を発注する業者を決める
どんな印刷所でも同人誌の印刷を依頼することは可能ですが、より納得できる仕上がりを求めて発注するなら専用の同人誌向けプランを提供している業者に依頼するのが安心です。
一般的な印刷所に発注する際には、しっかりと顧客の発注に応えたいという姿勢があるからこそ同人誌が何であるか、どのような目的で今回の発注をするのかなどはじめから説明しなければならないケースも少なくありませんが、同人誌向けプランを提供している業者ならば前段の説明をする必要も無く、すぐに流れを理解してもらえるのも嬉しいところです。
そのような業者であれば、原稿を見せたときにどのような紙とインクを使えばより良く見せることができるのかノウハウを持っており、的確なアドバイスやプランの提案を受けることもできます。
また、同人誌業界の事情を分かってくれる業者なら、イベントに参加する日まで間に合わせて欲しいという場合にも柔軟性を持って対応してくれることもあります。
何でも相談できる業者であれば納得の仕上がりが期待でき、イベントの際にはより多くの読者に手に取ってもらえる可能性が高まります。
原稿の納品方法や形式の確認をする
業者に同人誌の印刷を発注する場合には、原稿に一定の制限が設けられていることがありA4、B4、B5などの本のサイズが決まっていれば原稿の縦と横のサイズが決まりますが、一部には特殊サイズに対応しているケースもあります。
同人誌向けプランではパッケージ料金の範囲で最大のページ数が決まっており、オーバーした場合には追加料金が発生することもあるほか、形式がモノクロやカラーによっても原稿で使用できる色が変わります。
原稿の入稿は紙の原稿を直接手渡すケースは現在では殆ど無く、公式ホームページの専用フォームから電子データをアップロードする形式が主流です。
ファイル形式にはjpgやpngのような世界的に普及している形式や、有名グラフィックツール独自の形式もあります。
これらのファイル形式は変換することも可能ですが、その際に画質が劣化してしまう可能性もあるため、どのファイル形式に対応しているのかあらかじめ確認してから原稿を仕上げることも大切です。
また、印刷された用紙はカットされて製本されますが、業者によって3ミリ程度から5ミリ程度と幅があるため、仕上がりのバランスを考慮するためにも事前の確認が必要です。
印刷方法や紙、インクなどを決定
印刷方法は大きく分けてインクジェット方式とレーザー方式があり、確実に実現したければ対応した業者である必要があります。
インクジェットは紙に霧状のインクを噴霧して滲ませることであらゆる色を再現できますが、高精細なものは苦手です。
レーザー方式は高精細な印刷も可能ですが、その分コストは高くなってしまいます。
使用する用紙は普通紙が最もリーズナブルですが、発色があまり良くないのは価格相応で致し方ありません。
高級紙は発色や仕上がりが良くなるだけではなく、手触りも良くページをめくる際に心地よく読み進めてもらえるのも大きなメリットです。
インクは一般的なものだけではなく、蛍光色や金銀など特殊なものもあり表現の幅を広げてくれます。
昨今注目されるのが耐久性や耐光性の問題で、技術の進化によってある程度解決が可能となりました。
耐久性はいつまでもインクが保持され続け、耐光性は太陽光や蛍光灯の明かりの影響により色あせてしまうのを防いでくれます。
当然イニシャルコストは増加してしまいますが、せっかく創る作品をユーザーに末永く愛読してもらうために選択する作家やサークルも増えています。
入稿する原稿の仕上げと最終確認をする
作成時には元々の原稿を優先して考えるか、仕上がりを優先して考えるのか迷ってしまうところですが、パッケージされたプランに申し込む場合には原稿を合わせるケースがほとんどです。
あらかじめ用意されているプランの中からA4やA5などの本のサイズを選択すれば、おのずと縦と横のサイズが決まります。
また、ファイル形式を変換すると画質が落ちてしまうリスクがあることから、あらかじめ対応しているファイル形式で原稿を作成すれば後から変換する必要もありません。
完成をイメージしながら原稿を仕上げて、プランに合致するサイズやページ数であるかを確認し、もしも外したくないシーンがありページ数をオーバーするのであれば早めに追加のオプションを申し込むのも大切です。
ここでありがちなのがページの順番を間違えてしまうことで、分かりやすいファイル名やナンバリングに統一してミスを防止します。
全てを確認して問題が無ければ、いよいよ印刷所の公式ホームページのフォームから原稿の画像データをアップロードして入稿しあとは指定した住所まで宅配便などで届けられるのを待つだけです。
同人誌が届けられても終わりじゃない
発注した同人誌が指定した住所まで届けられると、新品独特の紙やインクの匂いに充実感を覚えるところですが、実はここで終わりではなく大切な作業があります。
昨今の優れた技術では滅多なことではミスは発生しないだけではなく、仕上がりを確認した上で出荷されるケースもありますが、それでもごく稀に乱丁や落丁が発生することがあります。
どんなにオートメーション化された機器を使用していたとしても、結局は目視による確認しか方法は無く、低確率とは言え一定の不具合を避けることはほぼ不可能です。
そのため、ここからはアナログな作業でページを1枚1枚めくり正しく印刷されているのか、不用意な折り目や破れなどがないかを確認します。
イベントのブースにわざわざ訪れてくれた読者が作品を手にして購入してもらったにも関わらず、楽しみにして家に持ち帰ってページをめくってみたら乱丁、落丁があったとなれば興醒めとなってしまいます。
そのような最悪の事態を避けて作品を思う存分楽しんでもらうためにも、作者やサークルの信頼を高めるためにも、一連の流れの中でも最も大切な作業と言っても過言ではありません。
同人誌に特化したツールの提供も
同人誌を作成している作家やサークルをはじめ、それを求める読者が急増している事情を鑑み、初心者の方からプロ志向の方まで簡単に創ることができる独自のツールを提供しているケースも増えています。
これまでは別途グラフィックツールを用意してjpgやpngなどの統一されたファイル形式で出力するのが一般的でしたが、業者のプリンターなどの機器の形式次第でイメージ通りの仕上がりにならずトラブルとなることも少なくありませんでした。
そんな中で登場した独自のツールでは、グラフィックツールの機能やパブリッシング機能に加えて、原稿を入稿するためのアップロード機能を備え、これ1本で全てを一元管理して作成することが可能です。
これならばファイル形式によって変換して画質が劣化する心配も無く、統一されたフォーマットで作成すれば完成形をイメージしながら原稿を仕上げることができ、そのままを再現した同人誌を創ることを実現します。
現時点では各印刷所独自のソフトウェアがリリースされていますが、将来的には統一されたフォーマットで普及することが期待されています。