グラビア印刷って何?オフセット印刷やフレキソ印刷との違いを解説
これから印刷を予定している人の中には「グラビア印刷って何だろう?」「オフセット印刷やフレキソ印刷などと、どのような違いがあるのかな?」などと思っている人がいるかもしれません。今回はグラビア印刷の概要について、メリット・デメリットなどと一緒に解説します。ぜひ参考にしてください。
グラビア印刷とは凹版印刷の1つ
まずはグラビア印刷の概要について見ていきましょう。グラビア印刷は、凹版印刷の1つです。凹版印刷とは版材(印刷部)に、凹み(へこみ)を作ります。凹んだ部分にインクを入れ、さらに余分なインクを取り除いた上で、凹み部分に残ったインクを使って印刷する方法です。
グラビア印刷では銀メッキの腐食によってできたシリンダに、印刷する図柄に合わせてセルと呼ばれる、小さな凹型のくぼみがたくさんあります。セルにインクを入れて印刷するのですが、セルの大きさを変えることでインクの密度が変化し、グラデーションの強弱を表現できるのが特徴です。密度が高いと濃く、反対に、密度が薄いと薄い色あいを表現できます。
女性タレントの写真がたくさん掲載された雑誌を、グラビア雑誌と呼びます。もともとグラビア雑誌はグラビア印刷を使用していたことから、その名前が用いられるようになりました。
オフセット印刷との違い
平版印刷の1つが、オフセット印刷です。平版印刷では印刷部に凹版印刷のように凹凸を作らず、代わりに、水と油の反発性を使って印刷します。まず印刷する部分を親油性にしておき、印刷するときに水を乗せます。水と油は混ざらないので、油性になっているところ以外にだけ水が含まれます。
すると、親油性になっている箇所にだけインクが乗り、希望するデザインの印刷ができるというわけです。オフセットとは日本語で「付けて離す」という意味。転写ローラーにインクを移し(オフ)、その後、印刷面に転写します(セット)しながら印刷します。オフセット印刷とグラビア印刷の主な違いは、次の3つです。
主な違い①:初期費用
オフセット印刷とグラビア印刷、どちらも印刷するためには版が必要です。しかし、用いる版に違いがあります。オフセット印刷では薄いアルミプレートを加工し、さらにロールに巻き付けたものを使います。
一方のグラビア印刷では、鉄やアルミといった金属のロールを加工したものを使うのが特徴です。金属ロールの方がコストはかかるため、グラビア印刷はオフセット印刷よりも初期費用がかかるでしょう。
主な違い②:製版スピード
オフセット印刷の版はグラビア印刷と比べて、作成までの時間が短くて済みます。そのため、速いスピードでどんどん印刷できることから、短期間でもたくさんの印刷物を手に入れられるでしょう。
主な違い③:量産性
量産性にも大きな違いがあります。前述したように、版の作成はグラビア印刷よりもオフセット印刷の方が早めです。しかし、グラビア印刷の版は金属でできていることから、耐久性に優れています。
そのため、同じ版を使って同じ印刷物を大量に作りたいときや、何度もリピートして作りたいときには、版が長持ちして何度でも使えるでしょう。もちろん版は徐々に劣化していくため、永久に使えるわけではありません。
それでも、オフセット印刷よりは量産性に優れています。また、版材をクロムメッキ処理すれば耐久性が向上し、より大量印刷が可能です。
主な違い④:文字の再現性
最後の違いは、文字の再現性です。一般的にオフセット印刷は、グラビア印刷よりも文字の再現性に優れています。
細かい文字を精密に表現できるので、仕上がりが美しいことが特徴です。また、商業印刷に用いられることが多いため、蛍光顔料のインクを使用し、鮮やかな画像を再現できます。一方のグラビア印刷は、文字としての認識は問題ないものの、オフセット印刷と比べるとシャープさに欠けます。
さらに、グラビア印刷は食品包装などにも用いられることから、蛍光顔料を使いません。そのため、オフセット印刷のような鮮やかな色合いの再現は難しいでしょう。
フレキソ印刷との違い
フレキソ印刷は、よくダンボールの印刷で用いられる方法です。凸版印刷方式の一種で、樹脂のハンコを使って印刷します。使われるインクの主流は水性です。柔軟性のある版を使うため、低圧で印刷されます。グラビア印刷との主な違いは、次の通りです。
主な違い①:印刷できるデザイン
グラビア印刷は繊細なデザインやグラデーションを再現できる反面、フレキソ印刷は細かい印刷には適していません。シンプルなデザインやシャープな文字のほか、単一色で塗りつぶすベタ塗りに向いています。
主な違い②:版の耐久性
先で述べたように、グラビア印刷の版は金属であることから、高い耐久性を持っています。一方のフレキソ印刷の版はゴムや樹脂でできており、耐久性は決して高くありません。一つの目安として、2万枚ほど印刷すると版が劣化してしまうでしょう。2万枚以上を印刷したい場合は、グラビア印刷を選択するのがおすすめです。
主な違い③:印刷単価
具体的な印刷単価はケースによって異なるものの、一般的には1,000枚~5,000枚ほど印刷する場合は、フレキソ印刷の方がリーズナブルです。1万枚以上では両者に大きな価格差がないものの、前述したように、2万枚以上印刷する場合は版の耐久性から、グラビア印刷が適しています。
グラビア印刷のメリット・デメリット
最後にグラビア印刷のメリット・デメリットを紹介します。
メリット①:印刷しにくい素材でも印刷できる
グラビア印刷はフィルムや包装紙といった、通常の方法では印刷しにくい素材にも印刷できます。インクの臭いが気にならないため、とくに食品関係のフィルムや包装紙の印刷におすすめです。
メリット②:高濃度のカラーを再現できる
グラビア雑誌に用いられるほど、高濃度で美しいカラーを再現できるのもグラビア印刷のメリットといえるでしょう。写真の再現性が高く、繊細で複雑なデザインなものもきれいに印刷可能です。
メリット③:版の耐久性に優れている
グラビア印刷の版は基本的に金属でできているため、耐久性に優れています。長期間の使用にも耐えられることから、大量印刷やリピート印刷に向いているといえるでしょう。
デメリット①:版作成にコストがかかる
版の耐久性に優れている反面、版作成にコストがかかるのはデメリットといえます。金属のためほかの印刷方法と比べて、価格が上がるのは当然です。1つの版で印刷する枚数が少ないと、1枚あたりのコストも割高になってしまいます。
デメリット②:使う色が多くなればなるほど、ズレが生じる可能性が高まる
グラビア印刷では原画に1色ずつ、色を押し当てていきます。そのため、使用する色の数が多くなればなるほど、色を押し当てる回数が増えていくということ。回数が増えることで、原画の位置がズレてしまう可能性が出てきます。
まとめ
グラビア印刷とは凹版印刷の1つで、グラビア雑誌の名前のもとになったといわれています。グラデーションの表現に優れており、高濃度のカラーの写真を忠実に再現できるのが大きな特徴です。
また、版は銀メッキや鉄といった金属で作られることから、耐久性の高さも魅力です。大量に同じデザインのものを印刷したり、何度もリピートして印刷したりする場合は、グラビア印刷が向いているでしょう。
どのようなものへ印刷したいのか、何枚ほど印刷するのか、どの程度までデザインの再現性を求めるのかなどに応じて、適した印刷方法を選んでください。