同人誌をフルカラーで作成する際に気を付けておきたいこと
同人誌を制作したら、できるだけ色鮮やかな仕上がりにして多くの人を魅了したいと思う方も多いでしょう。印刷を業者に依頼するときには色数を指定することになり、モノクロや二色刷りなどに比べてフルカラーがよいと考えるのはもっともなことです。ただし、作成を依頼する前に気を付けておかなければならない点があります。
CMYKで原稿を作成していくのが重要
同人誌のフルカラー印刷をするつもりなら、制作する時点から色の使い方について注意することが必要です。印刷が完了して手元に届き、楽しみにして確認したら「こんな色ではなかったはず…」とがっかりするような事態を防止するためには、事前に色の使い方を把握しておく必要があるためです。
具体的には、印刷を依頼したときに「どのような形で色を表現しているのか」を理解しておくのが大切となります。一般的にフルカラー印刷ではCMYKの4色のインクを使用しています。CMYKとはcyan、magenda、yellow、greenの頭文字を取ったもので、青系のシアン、赤系のマゼンダ、黄色、緑色の四色です。これらのインクを適切なバランスで混ぜることによりあらゆる色を表現する仕組みになっています。
そのため、原稿を作成するときには色をCMYKによって表現しておくのが重要なのです。コンピューター上では色の表現の仕方には複数の方法があり、イラスト作成のためのソフトウェアによってはオリジナルのパターンを使っていることもあります。
昔から主流なのはRGBによって色を表現する方法です。RGBとはred、green、blueの頭文字を取ったもので、赤色、緑色、青色の三色を指しています。この三色を混ぜても確かにあらゆる色を表現することができますが、細かく見ていくとCMYKに比べて劣ってしまうのは事実です。単純に考えてみても、四色を組み合わせて作れる色の種類数と、三色しか使えない状況で組み合わせて表現できる色の種類数では差があるのはわかるでしょう。
RGBによって表現するのに比べて、CMYKのほうが表現できる色が多いのです。CMYKのほうが多くの色を作れるのであれば、RGBで描いたイラストもCMYKで表現できるのではないかと思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
違う色の組み合わせで全く同じ色が作れるかどうかという問題があるからです。CMYKとRGBを相互変換するツールも存在していますが、完全に一致するわけではないというのが現状です。ほとんど同じように見える対応関係が作られているのはたしかではあるものの、色彩感覚が優れている人なら「かなり違う」という印象を受けてしまいます。
とくに、明るい色調の色は違いが大きくなりやすいので注意が必要です。そのため、基本的には同人誌の制作を始める段階で、イラストや文字などを作成するときにはRGBではなくCMYKを使うのが重要です。もしRGBで制作を始めてしまったのであれば、一度CMYKに変換をしてみましょう。
グラフィック編集ソフトを使えば簡単に変換することができ、どのくらい違うのかを確認できます。できるだけ早い段階で手直しをしていって納得できる色で描いていけるようにしましょう。また、スキャンした画像を使っている場合には、スキャナーかソフトウェアの設定を変更することによってRGBとCMYKを切り替えられるのが一般的です。
もしRGBで読み込んでしまっていたならCMYKでやり直しましょう。画面上で確認したとき、「RGBのほうが発色がよい」と見える場合もありますが、印刷してみるとCMYKでスキャンしたもののほうが「再現性が高い」と感じられるはずです。
環境の違いによる影響を考慮することも必要
同人誌のフルカラー印刷を依頼するとき、色合いについてもう一つ注意したいポイントがあります。それは環境によって色の見え方は違ってくるという点です。特にOSや拡張子が違ってしまうと、色が変わることがあるので注意しましょう。
前述のCMYK、RGBの兼ね合いと同じ原理で、環境によってはRGBにしか対応していないこともあるからです。新しいOSを使用していれば特に問題になることがないですが、ソフトウェアの違いには気を付ける必要があります。ソフトウェアがCMYKに対応していない場合には品質が変わってしまうことになるのは否めません。
色の再現が問題にならないようにするにはPDFファイルなどの環境依存性がなく、ソフトウェア自体が色について完全に対応している拡張子のファイルを使用するのが無難です。業者に依頼する場合には印刷の際に使用する環境を明記していることがほとんどなので、心配なら同じ環境を自前で用意して同人誌を作成しましょう。
環境の違いによるトラブルはしばしば起こるため、希望すればサンプルを印刷してもらえる場合もあります。大きな違いが生じてしまうと元も子もないので、対応してくれるかどうかを聞いてみるようにしましょう。
フルカラー印刷は費用が高くなる点にも注意が必要
フルカラー印刷をするときには費用についても充分に注意しましょう。グレースケールでの印刷に比べると安くても5倍くらい、高い場合には20倍近くかかってしまいます。印刷単価が上がってしまったらそれだけ同人誌の価格を上げなければならなくなってしまうため、売れなくて困ってしまうことになりかねません。
全ページをフルカラー印刷するというのはほぼ不可能だと考えましょう。平均的には1ページ当たり20円くらいは高くなるので、10ページをモノクロから切り替えただけで200円も原価が上がってしまうことになります。本当に色鮮やかでなければならないページだけに絞り込み、可能な限りモノクロにして仕上げるのが重要です。
一般的には印刷業者に依頼するときにモノクロのページと二色刷りのページ、フルカラーのページというような形で1ページずつ細かく指定することができます。
たとえば「表紙の後の1ページ目だけフルカラーにする」「章ごとに間にイラストを挟んでいき、そこだけはフルカラーにする」方法もおすすめです。フルカラーにするのは表紙や背表紙だけにしておいて中身は全てモノクロという方法もあります。
あらかじめどのページをどんな色数にするのかを決めてから制作を始めると作りやすく、制作期間を短縮しやすくなります。たくさんのページをフルカラーにしたい場合には、業者間で費用を比較するのも重要です。ページ数が増えれば単価を下げてくれる業者もあるからです。
どのくらいのページ数があるかだけでなく、印刷する同人誌の冊数によって影響を受けることもあります。複数の印刷業者から見積もりを取ってみて安いところを選ぶことにより、同人誌の単価を可能な限り下げられるようにしましょう。
同人誌のフルカラー印刷をしようと思っているときには、制作を始める段階でCMYKを選んでイラストや文字などを作り始めるのが大切です。RGBから変換すると完全に色が一致しないため、完成した姿を見て愕然としてしまう恐れがあります。間違っているのに気づいたらできるだけ早めにCMYKに変換して、色合いを調整してから制作を続けていきましょう。
また、色合いについては印刷する環境による影響も受けることにも注意しなければなりません。依頼する印刷業者がどのような環境で印刷するのかを調べて、できれば同じ環境で制作しましょう。費用についても充分に考慮し、同人誌の単価を上げ過ぎて売れなくなってしまわないようにするために、基本はモノクロで印刷するようにしてフルカラーで印刷をするページは必要最小限にするのが無難な方法です。