同人誌を印刷して読みやすいフォントとは?

数ある雑誌の中の1ジャンルである同人誌。個人誌や合同誌などさまざまな種類がありますが、多くの人に読んでもらうためには読みやすい印刷物に仕上げる必要があります。雑誌の読みやすさには、フォント(書体)・字詰めと字送り・行送りの3つがありますが、この中でも書体は重要です。そこで、同人誌で使えそうな書体について解説します。
同人誌は数ある雑誌の中の1ジャンル
同人誌などの雑誌にはいろいろなタイプに分類することができます。一つは発行の周期です。週刊誌や月刊誌や季刊誌などありますが、販売を目的とする雑誌は定期的に出し続けることが求められます。
ただし、同人誌にはそのような制約はありませんが、商業出版物として世の中に出すならば、発行日は守る必要があります。つまり書籍の場合と比べて、より厳しいスケジュール管理が求められます。
また、雑誌はジャンルによる分類もできます。まず総合誌や専門誌やマンガ雑誌といった大きな括りで分けられます。総合誌とは世の中の事象を幅広く論評・報道するものです。専門誌はビジネスやスポーツや文芸など、それぞれのテーマやニーズに絞って編集される雑誌のことです。
そしてマンガ雑誌も少年向けや少女向けや成年向けなど、その内容は多種多様です。特に同人誌の場合、同好の士が資金を出し合って印刷作成する同人雑誌であります。扱うテーマはマンガ雑誌のように多種多様であり、文芸系や一次創作系などがあります。
ところで一口に同人誌といっても、作者が1人の個人誌や、複数の作者により作られる合同誌に分類されます。また、ファンが集まって評論・創作などを載せるファンジンと呼ばれる雑誌も存在します。個人誌はともかく、合同誌のようにさまざまな筆者の原稿を集めて製作する場合、進行管理をしっかりおこなう必要があります。
はじめに執筆テーマと台割を確定させて、それぞれの原稿の分量を決めて執筆してもらうようにします。何故なら、内容や分量が成り行きだと収拾がつかないので、雑誌としてまとめることができないからです。
もしビジュアルな要素が重視される雑誌であれば、デザイナーやレイアウターに原稿を引き渡してレイアウトすることがあります。またDTPによる制作では、レイアウトと誌面製作が一体化しています。そのため、基本となる文字組みなど一定の約束事とデザイン的な要望を、デザイナーやDTP業者に伝えて初校出しまで任せます。
フォントは基本レイアウトで大切な要素
印刷物、ことに同人誌などの雑誌のレイアウトは、基本的に読みやすさを優先すべきです。テクニックに走ったり、格好良さを強調したりしたいがために読みにくい雑誌になってしまうことがありますが、これでは読者のことを考えていない独善的なものになり、本末転倒といわざるを得ません。
読みやすいレイアウトとするための要素としてフォント・字詰めと字送り・行送りの3つが挙げられます。フォントには見本帳と呼ばれるものが存在しますが、それを見ると非常に多くの種類があることが分かります。
しかし、和文書体に限ってみると、実は明朝体とゴシック体の2種類しかありません。見本帳に掲載されている数多くのフォントは、全て明朝かゴシックのバリエーション、或いは変形であります。
明朝体は、縦棒が横棒の3倍程度の太さで、「はね」や「とめ」の部分がはっきりと表現された書体です。これに対してゴシック体は、縦棒と横棒の太さにほとんど差がなく、「はね」や「とめ」の部分は強調されていません。一般的に本文書体としては洗練された明朝系の書体が多く使用されています。何故なら、そもそも明朝体が最も読みやすい書体だからです。
そしてゴシック系の書体は、見出しや強調する部分に使われる傾向があります。これによって、誌面にメリハリをつけているのです。もちろん明朝体であっても、太さや大きさによっては見出しに使われることがあり、逆に細いゴシック系の書体を本文で使用するケースもあります。
つまり、これらの書体の組み合わせによって読みやすさとセンスの良さを両立させるのですが、あまり多くの種類の書体を使いすぎると、かえって読みづらくなることがあるので注意が必要です。
続いて字詰めと字送りですが、字詰めとは1行で何文字を入れるかということであり、字送りとは文字と文字の間隔のことです。
普通に文字を組んだ場合、文字の中心から次の文字の中心までの距離は、1文字のサイズと同じになっています。デザイン上の効果を狙って、詰め打ちをすることがあります。詰め打ちとは、字間を詰めて組むことであり、全体の長さを短くすることで文字をより読みやすくする効果が期待できます。ただし書体の種類によっては、詰め打ちをすることで文字と文字が重なってしまうことがあるので注意が必要です。
ところで、字詰めと字送りと同様に読みやすさを決定づけるのが行送りです。行送りとは行と行の間隔のことで、文字の中間から次の行の文字の中間までの距離のことを指します。普通の雑誌や書籍の場合、読みやすい行送りとは、文字の大きさの1.5~1.8倍程度といわれています。
書体の種類によって見た目の文字の大きさが異なるため、スリムな書体の場合は行送りを少なめに取り、大きめのボディの場合には行送りを多めにとる傾向です。何故なら、この方がバランス良く見えるからです。このようにフォント・字詰めと字送り・行送りの3つの要素が決まれば、本文の版面の大きさが決まってきます。
同人誌に使えるフォントとはいったい何か
ところで漫画や同人誌の場合、登場人物のセリフが数多く出てきます。セリフというのは言い換えれば音声であるため、それを分かりやすく表現するためにフォントの使い分けがとても重要となります。
先述したように雑誌における基本の書体は、明朝体とゴシック体でありますが、上手に使い分けて状況を説明することになります。基本的なセリフで最もよく使われるのがアンチック体と呼ばれるものです。アンチック体とはゴシック体漢字にあわせた太かなとして誕生した書体です。全体的に線の太さがあまりない点が特徴的です。
しかしその分、シンプルで書体の癖がなく読みやすいという利点があります。とても長いセリフのときなどは、アンチック体を使うと読みやすくなります。
強調シーンなどで用いられるのが、源真ゴシックと呼ばれる書体です。これは源ノ角ゴシックJPを改変したものです。角ゴシックらしい力強い印象を与えるため、短いセリフを強調させたいときなどに用いることがあります。
さらに明朝体の中でも、名言や強調したいセリフに使うのが源ノ明朝です。明朝体が持っている荘厳な雰囲気を感じることができ、セリフに強い意志を与えることができます。マーカーで書いたような手書き書体であるりいポップ角は、とぼけた感じのセリフや可愛らしい女の子キャラのセリフなどに用いられます。
これ以外にも、間の抜けた会話などに使われるコーポレート・ロゴや、恐ろしいシーンなどに用いられるg_コミックホラー恐怖などがあります。意外と同人誌に使える書体はたくさんあり、シーンによって使い分けることで読みやすい作品に仕上げることが可能です。またこれらの書体は、インターネット上から無料でダウンロードできるものがあり、上手に活用していきたいものです。
同人誌を多くの人に読んでもらうためには、印刷物がいかに読みやすくなっているかが重要なポイントです。特に合同誌のように複数の作者が関わる場合、しっかりと打ち合わせをしておく必要があります。特にセリフなどで用いる書体は重要なポイントであるので、読みやすさをしっかり追求していくと良いです。
書体は明朝体やゴシック体が基本となりますが、この2つを改変させたものが数多く出されています。それらを上手に使い分けて読みやすい雑誌を作っていきましょう。