同人誌を印刷するときの用紙の種類と特徴
近年、同人誌というコンテンツはめざましい成長を遂げて漫画やアニメを知らない一般の方々にも広く周知されるようになりました。
素敵な同人誌に巡り合って、自分もこんなふうに本を作ってみたいと思った人も多いのではないでしょうか。
しかし、はじめての同人誌作りというのは何かと不明点が多いものです。
そこで、今回は同人誌印刷の際に使用される紙の種類について解説していきます。
もくじ
本文と表1に使用される紙の種類は違う
同人誌に限った話ではありませんが、大抵の本は表紙と本文とで使用される紙が違います。
お手元にある本や雑誌をご覧になるとお分かりになるかと思います。
表紙は一般的に表1~4などと表現されるのでここではそのように解説していきます。
表1に使われているものは、厚手だったり、表面がツルツルとしていたり、サラッとした滑らかな手触りだったりと実に多彩です。
印刷会社で本を作る場合、利用する会社にもよりますが表1~4印刷に使用できる種類は大変豊富です。
また質感自体が違うこともありますが、加工による違いであったりもします。
対して本文は、めくりやすいように薄手のものが使用されていたり、逆に本に厚みを出すために少し厚手のものを使用していたりと目的によって違います。
カラー本文か、モノクロ本文かでも変わってきますので、こちらも種類が多いと言えるでしょう。
少々の例外として、表1~表4と本文が同じものが使用されている簡易版のような印刷もあります。
これにはオンデマンド印刷やコピーなどが使用され『コピー本』といったように呼ばれることが多いです。
それぞれの種類特徴と重さについて
厚さについて触れましたが、実際にどのくらいのものなのか文章や言葉で表すのは難しいです。
そこで、厚みはどのように表されるのかをご説明します。
印刷所の解説をご覧になるとお分かりかと思いますが、種類の横に〇〇kgといった重さが書かれています。
これは連量計測による重さの表記です。
規定の寸法に仕上げられた1,000枚の束の重さで、これが軽いほど薄く、重いほど厚みがあるということになります。
これを目安に印刷に適したものを選んでいくというわけです。
ごく一般的な価格の印刷会社で刷る場合のおおまかな目安になりますが、表1~表4には160~200kg程度のものが使用されることが多いです。
対して本文には90~110kg程度のものが使用されることが多いようです。
重さだけを見ても、表1と本文ではかなり厚みに違いがあることがわかります。
また先述しましたが、表1には特殊な加工を施すことも多く一概に重さで厚みが正確に把握できるとは限りません。
同じものを使用したとしても、加工で大きく厚みや手触りなどが変わり、描写物の見え方も大きく変わります。
表1でよく使われる人気の紙と加工
表1と言えば最初に人の目に入る部分ですから、できるだけ綺麗な仕上がりになるものを選びたいですね。
しかし、描写物によって適切な種類が違ったり、使用できないものがあったりと少し難しくもあります。
適切な種類が選べなかったばかりに、せっかくの同人誌が台無しなんてことも少なくありません。
そこで、どんな描写物であっても比較的左右されにくい人気のあるものを解説します。
まず、どんな印刷会社でもほぼ取り扱いのある『上質系+PP加工』はどんな描写物にも合う人気のコースです。
上質系とは表面がサラッとした種類のもので、このままでは「少し厚みのある手触りのいいコピー」のようなものですが、これにPP加工というビニール素材を貼ることで厚みや強度、手触りなどを変えて描写物の印象を操作するものです。
厚さは160~200kg程度のものが使用されることが多いです。
PP加工は大きく分けるとクリアPP加工とマットPP加工があります。
クリアPP加工はグロスPP加工などとも呼ばれ、その名の通りツルツル、ピカピカとしたまさにグロスを塗ったような華やかな印象になります。
対してマットPP加工はすりガラスのようなサラリとした手触りで、落ち着いた印象になります。
表1で使える特殊な紙と加工について
定番のものに対して「せっかく描いた同人誌なのだから人とは違う特別な仕様にしてみたい!」という方も多いでしょう。
そういった方のために、印刷を請け負っている各社はさまざまなコースを用意しています。
とても数が多く、特殊な加工や形状まで含めるとそれこそ何千、何万といった組み合わせの印刷ができます。
ここでは『定番ではないけれど、人気が高くちょっとかわったことをした人向けの表1』をご紹介します。
まずは人気の高い『エンボス』や『マーメイド』といったデコボコと表面が波打ったような印象のものです。
ザラリとした手触りと独特の風合いで優しく落ち着いたイメージにすることができます。
こういった手触りや風合いを楽しむタイプのものにはPP加工はしないことがほとんどです。
そして『シェルリン』や『キュリアス』などに代表されるパールラメ系も人気があります。
表面に真珠玉のようなつややかな反射をする風合いが施されていたり、角度によってキラキラと光るラメが散りばめられていたりと、大変華やかなイメージに仕上がります。
こちらも基本的にはPPの加工は施しませんが、少し変わった効果を狙ってPP加工をすることもあるようです。
本文に適している紙の選び方について
表1~表4に適したものがあるように、本文に適したものも目的によって異なります。
大まかに分けて本文は『カラー本文』『モノクロ本文』さらに『漫画イラスト系であるか、文字のみの小説形態であるか』に分かれます。
カラー本文は再現方法が全く異なりますので、もちろん手法も変わってきます。
基本的には上質系とコート系の60~110kgくらいのものを使用します。
こちらは同じカラーでも表1~表4と違って加工を施すことはほとんどありません。
モノクロ本文の漫画イラスト系には上質系とコミック系が使用されます。
上質系は厚手のコピーをサラリとさせたようなもので、主に繊細な線や細かい描写を精密に表すことに長けています。
裏側に透けることも少なく初心者でも失敗しにくいと言えるでしょう。
半面、厚みのわりには本自体が重くなりやすい欠点があります。
コミック系は週刊漫画誌などで使用されるすこしザラッとしたものです。
これは指がひっかかるのでページめくりが快適であるという特徴があります。
厚みが出るわりには軽くて持ち運びがしやすいことが特徴です。
しかし、繊細な描写を表現することは少し不得意といえます。
最後に文字のみの小説形態のものですが、こちらは上質系もコミック系も両方使用されます。
しかし、小説形態のものはページ数が多くなりやすいという特徴があるので、本が厚くなりすぎないよう薄いものが好まれます。
その他の特殊な例や印刷について
大抵の印刷会社はコースのセットや、決まった加工の中から選んで印刷をすることが多いですが、誰もやらないような特別な仕様の本が作りたい人や、記念の本を作りたいといった人向けの特殊な仕様で請け負ってくれるところもあります。
サイズや裁断、種類加工など、完全にオーダーメイドで世界にひとつだけの本を作ることも可能です。
もちろん少々お値段は高くなってしまいますが、そのかわりにとても魅力的な一冊になることかと思います。
特殊なものの一例として、熱を加えると蝋が溶けたようになり、下の絵が透けて見える加工ができる紙などがあります。
これにより、一部分だけ熱を加えて下の絵を透けさせ、表1の一部にしてしまうという一風かわった表現をすることが可能です。
目にした人は「これは一体どうなっているのだろう」とページをめくってみたくなることでしょう。
その他、角度によって絵柄がかわる二重の表現ができる加工や、わざと汚れたように見せてあたかも古めかしい古文書のようにできるものなど様々です。
ほとんどの印刷会社はその会社で取り扱える紙のサンプルを請求できるので、まずは一度資料請求をしてみるのがよいでしょう。