生モノとも呼ばれる芸能同人とは?創作するときの注意点をご紹介!
同人誌は出版社の関与がなく、自費で製作・出版する代わりに自由な表現をできるのが魅力です。なお、同人誌の中にもさまざまなジャンルがあり、生モノと呼ばれる芸能同人も人気のカテゴリーの一つです。そこで本記事では、芸能同人とは何か、創作する際の注意点などを解説します。
芸能同人とは
同人誌と聞くと、マンガやアニメのキャラクターを題材に創作するイメージが強いのではないでしょうか。しかし、一口の同人誌といってもさまざまなジャンルがあり、芸能同人というジャンルは人気テーマの一つです。
芸能同人は通称“生モノ”と呼ばれています。実在する人物、いわゆる生の人を扱うことから生モノという表現が使われており、具体的にはアイドルやタレント、俳優、声優、スポーツ選手、アナウンサーなどを創作の対象とします。
芸能同人は生モノと呼ばれるほか、実在人物同人やnmmn、2000年代以降は“Real Person Slash”の頭文字を取ってRPSと表現されることもあります。なお芸能同人の中でもアイドルを対象とする際は、アイドルのドルを誤変換して“$”“弗”と表現されることもあります。
ただし、こちらの表現は批判的なニュアンスを表現するために使われていることもあるので注意が必要です。たとえば、創作の対象となっているアイドルのことを嫌う人が否定的なニュアンスを込めて使ったり、痛いという意味合いを表現するのに使われたりするケースがあります。
また、生モノという表現は故人に対してはほとんど使われない点も特徴といえます。歴史上の人物やすでに亡くなっている俳優などを創作の対象にする場合は、生モノという表現を使いません。
亡くなって日の浅い人物には使われることもありますが、基本的には歴史創作ジャンルとして扱われたり、生モノという表現から“ヒモノ”“カワキモノ”といった表現がされたりすることもあります。
最初はファンレターの延長だった
芸能同人という創作のジャンルが誕生したのは、ファンレターの延長だったと考えられています。同人誌の魅力は、自費で製作費を負担する代わりに、出版社の関与がなく自由な表現をできることです。
出版社から出される本やマンガでは、勝手に実在する芸人や俳優の姿を描くことはできませんが、同人誌なら創作者の対象や内容を自由に決められます。
このような同人誌の特性を生かし「応援したい」「応援しているのを知ってほしい」「創作対象の方の魅力を周囲に知ってもらいたい」といった、いわばファンレターのような思いが原動力となって芸能同人が誕生したのです。
芸能同人は先に解説したとおりさまざまな呼び方がありますが、ファンレターのような意味合いで始まったことから“ファンジン”と呼ばれることもあります。
小学校などで、自分の応援しているアイドルの似顔絵などを持っていき、休み時間にクラスメイトと見せ合って感想を言い合ったり、ノートにまとめて見せびらかしたりすることがあるでしょう。
このような、応援している気持ちを周囲に伝えたい、応援している人の魅力を周囲に伝えてファンを増やしたい、気持ちを共有したいといった気持ちが芸能同人につながっているといいます。
題材のバリエーションが豊富
芸能同人の創作対象は非常にバリエーションが豊富で、先に解説した俳優や声優、アイドル、スポーツ選手といったテレビでよく見かける方をはじめ、ニコニコ動画などで芸能人とまではいかないものの、有名な一般人という位置づけで活躍している歌い手や踊り手、生放送主、さらには動画投稿者やゲーム実況者、アマチュア声優、海外アイドルまでも創作の対象になるケースがあります。
また、2017年より人気となっている、バーチャルYouTuber(2Dや3Dのキャラクターアバターを使ったYouTube配信を行っている方)、通称VTuberを対象とした作品も誕生しています。芸能同人が誕生したのはファンレターのような位置づけだったことから、イベントやコンサートの内容をまとめたものや対象者の活動の記録などがつづられていたものが中心でした。
当時は写真をコピーするのもむずかしく、挿絵や似顔絵をモノクロで描いたものも多くありました。ただ、絵を描けるファンがイラストや簡単阿な4コママンガを描きはじめ、現在の同人誌でよく見かける本格的なマンガや小説に変わっていった背景があります。
もっとも主流となっているのは有名人同士を妄想で絡ませる内容のものや、同性愛ネタなどが多く見られます。有名人とオリジナルキャラクターを絡ませる作品も多くあり、製作者の自由な表現が広がっているのです。
そのため、ただ応援したい気持ちを込めて思いや活動記録をつづるファンと、創作活動に注力するファンの間では意識の差が生じているのが事実としてあります。応援したい気持ちは同じであるものの、創作するものの違いによって意識の差が生じているのです。
芸能同人を作るならJ禁・P禁に注意
有名人同士を妄想で絡ませる内容のものや、同性愛ネタを題材にしてマンガを作るものなどは、総じて二次創作といいます。二次創作が主流となっている芸能同人ですが、当初主流だったファンレターの延長のような同人誌を製作している方もいて、両者の間には溝があります。
純粋な気持ちで応援しているファンに対し、妄想を膨らませて楽しんでいるファンもいて、どちらも同人誌の世界では誤りでないものの、意識の差から互いに溝があるのです。そこで、二次創作に注力しているファンが配慮して、閉じた世界で活動するために自主規制をかけるのが一般的となっています。
二次創作は同じ趣味同士の方が集まって楽しめれば問題なくものであり、反対に周知されすぎると問題になることも懸念されます。自由な創作の場を守るためにもあえて自主規制をかけて、周囲の人から否定されたり、創作活動を制限されたりしないように工夫しているといえるでしょう。
なお、ウェブサイトに公開されている二次創作による芸能同人は“P禁”“J禁”といった表現を使って閲覧購入制限がかけられています。P禁とは、このようなジャンルに興味のない一般人の方は見ないでくださいという意味で、J禁とは創作対象となっている本人や事務所関係者などには見せないでくださいという意味です。
同人誌の醍醐味は自由度の高い創作活動ができる点であるため、閉じた世界で周囲に迷惑をかけない活動をすることで、自分たちの世界を守る工夫がされているのです。
そのため、芸能同人を作りたいと考えている場合は、J禁やP禁など同人用語と呼ばれるものをきちんと理解し、どのようなルールや約束ごとを守って活動されているのか把握してから創作活動を始めることが大切です。
ルールや約束ごとをきちんと理解しないまま創作活動をしてしまうと、自分自身の活動で思わぬトラブルが生じ、同じジャンルが趣味で楽しんでいる、あるいは活動している仲間に迷惑をかけかねません。
まとめ
芸能同人とは、俳優やアイドル、スポーツ選手など実在する人物を対象にした同人誌のことで、生モノやnmmn、RPSなどと呼ばれることもあります。芸能同人の世界で活躍している人は、予期せぬトラブルを避けるためにも、一人ひとりが節度を持ち、自主規制をかけて閉じた世界で楽しんでいるケースが大半です。そこで、芸能同人に興味があり、創作活動をしてみたいと考えている方は、芸能同人はルールや約束ごとがあること、P禁やJ禁といった言葉の意味をきちんと理解したうえで創作活動を行うことが重要といえるでしょう。