同人誌を作るなら紙にもこだわる?普通紙・上質紙・再生紙の違いとは
同人誌を作る際、印刷の発注時に紙を選ぶ工程があります。紙には普通紙のほか、上質紙や再生紙、マット紙、コート紙、ケント紙、特殊紙などたくさんの種類があります。はじめて同人誌を作る人は、どの紙を選べばよいか分からないという方も多いのでしょうか。ここでは同人誌を作る前に知っておきたい、紙についての基礎知識をご紹介します。
もっとも使用率が高いのは普通紙
紙の中でもっとも多く使われているのは普通紙です。会社の複合機などでコピー用紙として使われており、PPC用紙と呼ばれることもあります。PPCはPlain Paper Copier(普通紙複写機)の頭文字からきています。
普通紙には、色のついた紙やインクジェットプリンターの両面印刷にも対応できる厚めの両面印刷用紙など、用途に応じた加工が施されたものもあるのです。普通紙にはB4、A4、A3といったサイズや厚みの規格があります。
普通紙はメーカーや機種にかかわらずどんなプリンターでも印刷できて、汎用性が高いという利点もあります。発色はさほどよくないものの、シンプルなイラストや図表であれば問題ありません。文字を中心とした会議資料などのプリントに適しています。
普通紙は文字を印刷するにはぴったりですが、画像の印刷に向いていません。耐水性があまりないので、湿度の高い場所で印刷内容が滲んでしまったり、紙がよれてしまったりすることもあります。
もっとも質がよいのは上質紙
上質紙は100%パルプで作られた紙で、表面にコーティングはされていません。そのため、普通紙のように表面がなめらかではなくざらざらとしており、艶や光沢もありません。
コーティング加工が施された紙と比較するとインクがにじみやすいですが、なめらかでないことがペンや鉛筆で文字を書くのに適しているという特徴があります。そのため、便箋やノート、メモ帳、ドリルといった印刷物に使われています。
コーティング用の塗料が塗られていない分軽いので持ち運びも楽です。厚手の上質紙は名刺の印刷にもよく使われます。
普通紙のように販売用サイズの規格はなく、印刷工場で使用する大きなサイズからカットした小さなものまでさまざまなサイズ、厚みの上質紙があります。上質紙は強度が高いので、オフセット印刷でも使えるのです。
また、厚みがありツルツルしていないため、プリンターによっては紙が詰まってしまうことがあります。パルプの質感を感じることのできる上質紙は、自然で落ち着いた色合いが特徴です。上質紙の厚みには豊富なバリエーションがあります。
上質紙55kgはレシートや新聞、上質紙70kgは冊子の本文や申込用紙、上質紙90kgはチラシやフライヤー、上質紙110kgはパンフレットなどにちょうどよい厚みです。
記載の重さは1,000枚重ねたときの重さとなっています。厚みのある上質紙を表紙に、薄い上質紙を本文に使うこともできます。
上質紙は上質という名称から高級品のようなイメージを持つ方もいますが、意外にも安く流通していてリーズナブルな点も特徴のひとつです。ページ数の多い書籍や部数を多く印刷したいときは、上質紙にすると費用が抑えられます。
エコで環境にやさしいのは再生紙
コピー用紙には上質紙を原料にして作られたものと、古新聞や古雑誌などの古紙を原料にして作られたものがあります。環境問題やSDG‘sへの関心の高まりから、古紙を利用して作られた再生紙を意識して選ぶという人も増えているのです。
日本はリサイクル率が高く古紙の比率が7割を超えている古紙が多くあります。グリーン購入法適合品としてグリーンマークを取得できるのは、古紙比率7割以上の再生紙のみです。
最近では環境活動にとり組む企業も増えており、グリーンマークのついた再生紙のコピー用紙を使っている企業も多くあります。古紙にはインクなどが残っているため、原料に古紙が多く配合されているほど色が残った紙になります。
近年は紙のコーティング技術も進歩しており、再生紙の質感は普通紙とかなり近くなってきているのです。質感の向上に伴い用途の幅も広がり、いまでは雑誌や書籍、教科書などさまざまな印刷物に再生紙が用いられています。
再生紙はもともとゴミとして燃やされるはずだった古紙を原料としています。再生紙の利用はリサイクル活動の推進につながっているといえるでしょう。また、ゴミを減らすほかにも上質紙の原料となるパルプの使用量を減らすことができます。
パルプは木材から製造されます。パルプを製造するために森林が伐採されることが、地球の二酸化炭素濃度を上昇させたり地球温暖化の原因になったりするといった環境破壊につながっているといわれているのです。
再生紙の利用は森林資源の保護にもつながっているのです。普段からエコに関心があり、エシカル消費を心がけている人は再生紙も検討してみてもよいでしょう。
ただ、再生紙の製造には、古紙の分別や回収、インクの除去、仕上げのコーティングなど上質紙よりも製造に手間がかかります。再生紙のほうが上質紙よりも安そうなイメージがありますが、実は再生紙のほうが、製造コストが高くなっています。
上質紙が1枚あたり0.69円であるのに対して、再生紙は0.74円と、上質紙よりも再生紙のほうが1枚あたり0.5円程度高くなるのです。再生紙を使うと印刷費用が割高になることは覚えておきましょう。
また、再生紙は原料の古紙配合率が高いほど印刷適正や強度が低くなります。発色を重視した印刷の場合や、長期保存する予定の印刷物には不向きな紙であるという点にも注意してください。
同人誌を作るなら上質紙がおすすめ
同人誌作成におすすめなのは上質紙です。上質紙はインクが紙にちょうどよい具合に吸われて読みやすい文字に仕上がります。そのため、文字の多い印刷物には上質紙が採用されることが多いです。
教科書、マニュアル、プレゼン資料、広告、ダイレクトメール、新聞の折り込みチラシ、アンケート用紙、スタンプカード、会員証、注文書、小説、論文、会報誌、フリーペーパー、雑誌など、身の回りのさまざまな印刷物は、上質紙に印刷されています。
上質紙はにじみやすいので写真など色ベタのある印刷物には不向きです。印刷物の発色を鮮やかにしたいのであれば、コート紙やマットコート紙を使うとよいでしょう。写真印刷には艶のある紙が適しています。
イラスト集や画集などを印刷する場合も、色を鮮やかに見せることのできるコート紙もしくはマットコート紙がおすすめです。マットコート紙は光沢がコート紙に比べて控えめなので、コート紙よりも落ち着いた印象の仕上がりになります。
ただ、上質紙にはやわらかい印象に見せられるという効果もあるため、イラスト集や画集であってもそうした効果を狙いたい場合は、上質紙がよいという判断になることもあります。
紙にはワニ皮模様のクロコグロスや、真っ白くてざらざらしたアラベールスノーホワイト、和紙風の紙など、特殊な用紙もあるのです。紙の種類をいろいろ調べてみるのも楽しいものです。
同人誌だけでなく自分の名刺を作ったり、チラシを作ったりする際に、どんな紙がよいか考えながら見てみると、より楽しく紙について学ぶことができます。
まとめ
普通紙、上質紙、再生紙それぞれの特徴についてご紹介しました。ナチュラルな雰囲気でリーズナブルな上質紙、強度や耐久性は低いけれど環境に優しい再生紙など、紙には種類によって強みと弱みがあるということが分かったのではないでしょうか。
紙にもこだわることで、よりよい同人誌作りができます。こちらで紹介した内容も参考に、自分が重視したいのがコストなのか、環境への配慮なのか、仕上がりの美しさなのかを考え、目的に適した紙を選んでください。