同人誌の売上を左右する表紙!裏表紙や背表紙を作るときのポイントは?
「表紙買い」という言葉があるように、同人誌にとっての表紙は、売上を左右する重要な要素です。作家さんの立場からしても、表紙は心血注いで手掛ける大切な箇所の1つではないでしょうか。ここでは、同人誌の表紙・裏表紙・背表紙を作るポイントや、裏刷り・箔押しの必要性を解説します。魅力的な同人誌作りの参考にしてください。
同人誌の仕上がりを決める表紙
表紙は同人誌の顔です。同人誌が委託先の書店で販売される際にはビニールがかけられていたり、コミケなどのイベントではスペースが混雑していることがあったりと、中身を吟味してから買えないことも多々あります。
そんななかで、表紙で購入を決める「表紙買い」が行われることも少なくありません。このように、同人誌の頒布・販売の際には中身を確認しにくい場合が多く、表紙が同人誌の売上を左右する重要なアイキャッチとしての役割を果たします。
中身の印刷はモノクロでも、表紙だけはフルカラーで仕上げるという作家さんは少なくありません。表紙は同人誌の中でも数少ないカラーページであり、コマ割りの必要なマンガと比べると、比較的自由に描けるページでもあります。表紙を描く際には、見てくれる人に楽しんでもらえるように精魂込めながら、楽しんで描きましょう。
どんな表紙にするとよい?
表紙を作る際には、サークルや作家さんのよさがよりよく伝わるように作りたいものです。ここでは、よい表紙を作るための考え方やポイントを紹介します。
自分の作風を表現する
同人誌を買いたいと思うのは、サークル・作家さんの絵柄や作品の雰囲気に惹かれたときでしょう。同人誌の顔である表紙は、自分らしい絵柄や雰囲気を押し出して作りましょう。
表紙だけ特別に、いつもと違う絵柄にしたり、人気絵師・人気作家を意識した描き方をしたりと、特別人の目を引こうとする必要はありません。ありのままの作風で勝負するのがおすすめです。
内容と関連性の高い表紙にする
表紙買いをする人は、表紙に描かれたイラストの雰囲気を本編で読みたいと考えているはずです。また、SNSなどで事前に本の概要を知って買ってくれる人からしても、表紙を見て「あ、この本だ」と一目で分からなければ不安で買いにくくなるかもしれません。
そのため、表紙は、本編の内容に出てくるキャラクターや本編のお話と関連したテイストで作ることが大切です。本編中に出てこないキャラクターが描かれていたり、シリアスな話なのにギャグ風味の表紙になっていたりすると、読み手は本編の雰囲気に浸りにくくなってしまいます。
また、推しのキャラクターの表紙に惹かれて買ったにもかかわらず、本編に出てこなかったり脇役扱いになっていたりすると「表紙詐欺」などといわれてしまうかもしれません。
カラー?モノクロ?印刷方法を選ぶ
近年はフルカラー印刷も比較的安価で利用できるようになったため、同人誌の表紙もほとんどフルカラーで作られるようになりました。
しかし、表紙は必ずしもフルカラーでなくても構いません。あえてモノクロや多色刷りにしてフルカラーの表紙と差別化を図ってみてもよいでしょう。
裏表紙を作るときのポイント
裏表紙は表紙と対になっており、本の最後を飾るページでもあります。ここでは、裏表紙を作る際のポイントを紹介します。
表紙とのバランスを取る
裏表紙は表紙と異なり、本のタイトルなどを入れる必要がありません。そのため、裏表紙にはスペースを目一杯使ってイラストなどを施すこともできます。ただし、あまりやりすぎるとどちらが表紙か分からなくなる恐れがあります。
「ダブル表紙」のように、あえて裏表紙を表紙と同じように装丁する方法もありますが、表紙と裏表紙を明確に分けたい場合は、表紙より目立つような描き方はしないほうがよいでしょう。
表紙と連動したデザインにする
裏表紙を、表紙と連動させたデザインにするのも1つの方法です。本を開いて伏せると、表紙と裏表紙が同時に目に入りますが、表紙と裏表紙を1枚の原稿として発注することで、表紙と裏表紙を一枚絵のようなデザインにすることもできます。
また、オールキャラ本など、登場キャラクターが多く表紙に収まりきらない場合は、裏表紙にもキャラクターを配置するのもおすすめです。表紙と裏表紙をフル活用して作品の世界観を表現してみましょう。
背表紙を作るときのポイント
背表紙は、表紙と裏表紙をつなぐような位置にあります。同人誌は商業誌や一般的な書籍と比べてページ数が少ないため、背表紙がないものも多く見られます。反対に、ある程度厚みのある同人誌の場合、背表紙を作ることを考えましょう。
背表紙だけで分かるデザインにする
本棚にしまうと通常は背表紙が表を向いているため、本棚から本を探すときは背表紙を頼りにすることが多いでしょう。背表紙を作る場合、本棚に並べて見ることを想定し、背表紙だけでもその本だと分かるデザインがおすすめです。
背表紙に仕掛けを作る
商業誌の単行本などでも、1巻から順に並べると背表紙だけで1つの作品のように見える仕掛けが施されている場合もあります。
シリーズものの同人誌であれば、背表紙を一貫したテーマ性を持たせたデザインにするなどして、本棚に並べた人が思わずニヤリとしてしまう遊び心を加えてもよいでしょう。
表紙・裏表紙と一体の背表紙にする
表紙から裏表紙までを1枚の原稿として発注する場合、背表紙も表紙・裏表紙のデザインに組み込む必要があります。印刷所によっては適度なサイズの背表紙を挿入してくれることもあるものの、自分で背表紙を挿入する場合は、ページ数や本の厚みによって背表紙のサイズも変わるため、仕上がりにずれが生じないように注意しましょう。
同人誌に裏刷りや箔押しは必要?
目を引く表紙を作りたいと考える場合、特殊な加工を施して一味違う装丁を試すのも1つの方法です。装丁をグレードアップできる方法には裏刷りや箔押しがありますが、表紙には裏刷りや箔押しが必要なのでしょうか。
箔押し・裏刷りとは
通常、表紙・裏表紙の裏面には印刷を施しません。裏刷りとは、表紙・裏表紙の裏面に印刷を施す手法を指します。箔押しは、金箔や銀箔を使った加工方法です。
用紙に金箔・銀箔を圧着させてタイトルなどを装飾し高級感を演出します。裏刷りも箔押しも、同人誌の表紙を加工する方法としては認知度の高い方法です。
裏刷りや箔押しは必須ではない
裏刷り・箔押しは凝った表紙を作るのに役立つ手法ですが、必須ではありません。裏刷りは、一般的な書籍でもあまり見られません。安易に裏刷りを施すと、かえって安っぽく見えてしまう恐れもあります。
また、箔押しはきらびやかなため見栄えがしますが、やりすぎると品のない仕上がりになってしまうため、注意が必要です。くわえて、通常の印刷より劣化が進みやすい場合があり、保存の仕方によってはくすみが出たり剥がれたりする場合もあります。
このように、裏刷りも箔押しもメリットばかりではありません。デメリットについても把握し、効果的な表紙作りにつながるかを検討したうえで取り入れましょう。
コスト面とのバランスに注意する
さらに、特殊な加工は基本的にオプション料金がかかります。1,000冊単位で印刷する場合は単価が抑えられるものの、100冊単位程度の小ロットでは高くつくため、印刷費用も本の値段も上がります。
多くの人に読んでもらいたくて凝った表紙を作っても、価格が跳ね上がりすぎて手に取ってもらえなくなると、本末転倒です。裏刷りや箔押しを取り入れたいのであれば、コストと仕上がりのバランスを考慮することが大切です。
まとめ
表紙は、作品の雰囲気を買い手に伝える手段の1つです。また、買い手・作り手の双方にとっても同人誌のワクワク感が詰まった部分であり、本文と同様、同人誌の醍醐味の1つでもあります。本文と同様に、表紙は、自分の作品の世界観を楽しんでもらえるような作りにすることを心がけましょう。表紙に手間やコストをかけすぎると、肝心の同人誌そのものを手に取ってもらえなくなる恐れもあります。表紙作りにばかり気を取られて、同人誌をまるごと楽しんでもらうために表紙を作ることを忘れず、魅力的な表紙作りに取り組んでください。