同人誌はなぜ「販売」ではないのか?頒布を使う理由について解説!
「販売」や「配布」は知っているけど「頒布」ってどういう意味なの?読み方は…なぜ、同人誌では「販売」ではないの?そんな風に思ったことありませんか。今回はそのような質問にお答えするのと同時に頒布を使う理由について書きたいと思います。最後まで読んでもらえるとうれしいです。
そもそも頒布の意味とは?
日常の会話や文章であまり出てこない頒布。そもそも頒布って何て読むの?と思う方も多くいると思います。読み方は「はんぷ」で、似た言葉に販売・配布・配付などがあります。以下で簡単に説明します。
頒布
頒布は、品物や資料などを広く行きわたらせること、また広く行きわたることを指します。神社やお寺のお守りや破魔矢も販売ではなく頒布を使用し、同人活動のなかでよく見かける同人誌も同様です。
頒布は有料・無料に関係なく使用する言葉ですが、有料は法的には販売にあたります。同人活動や神社、お寺では、なぜ販売ではなく有料頒布を使用するのでしょうか。
理由としては同人活動のイメージを悪くしたくない(金銭の受け渡しがあまりよいイメージではない)、日本の伝統文化を守って行きたいという日本特有の古い思想が原因のひとつだと考えられます。
販売
販売はよく耳にし、よく使う言葉です。意味は、対価(金銭)を得て商品やサービスなどを提供すること。と、少し難しいですが。基本的にスーパーや本屋など、ほとんどのお店が行う行為は販売です。
配付
配付とは、特定の方に配ることを指します。会議資料や町内会資料などがそれにあたります。関係のある人、必要としている人に配ること。会社でよく聞く「資料配付」がそうですね。
配布
配布は完全無料で配り広めることを指します。よく、駅前などでみかけるチラシやポケットティッシュなどがそれにあたります。
この例に限らず日本語には似た言語が多数存在します。このように、日本語は難しく、意味を理解していないと使い分けができません。
同人業界で販売ではなく頒布を使う理由
なぜ、同人業界では、販売ではなく頒布を使うのでしょうか。同人業界、同人文化では金銭のやり取りの表面化を避けたいという考えから、頒布を使っています。
理由としては、金銭のやり取り=営利目的のイメージが強く、結果的に「販売」という構図になるからです。
同じ理由なのか、お寺や神社のお守りや破魔矢も販売ではなく頒布を使用していますね。これも、イメージを悪くしたくない、白黒をはっきりしない、何でもうやむやにする、など日本独特の風潮なのでしょう。
また、呼び方も販売者やお客ではなく、一様に参加者と呼びます。販売者やお客という呼び方では、どことなくお金のにおいがするからなのでしょう。しかし、お金が動いているのも事実で、無料で同人詩を配っている同人サークルの方が少ない傾向にあります。
法的には金銭の受け渡しがあるとそれは販売です。古くから伝わる文化を汚したくない、そんな気持ちの現れなのか、お寺や神社のお守りや破魔矢、同人サークルの同人詩を販売ではなく、頒布と呼ぶのにはそういった理由なのが見てとれます。
また、同人活動を行えるのは会員だけです。ここでいう会員とは仲間や同志、趣味嗜好の合う人の集合体のことを指します。仲間同士や趣味の合うものだけでのやりとりだと、お金の受け渡しがあっても、なぜかキレイに聞こえてしまうのも事実です。
同人活動をするなら同人文化を理解することはとても大切!
同人文化や同人詩は明治時代から続く、古い日本文化です。どのようなことにも、ルールやマナーは存在します。同人文化を守りたいなら、最低限の同人マナーを守ることが大前提です。
マナーを守れない方は、基本参加はできません。とくに、同人活動におけるルールやマナー違反は法的に罰を受けなければいけないケースが多いので注意が必要になります。
同人活動や同人詩には著作権ギリギリ、もしくは違法なケースが多々ありますが、なぜか黙認されているのです。同人活動における著作権について簡単に説明します。
翻案権
最初に説明するのは翻案権です。この権利は、同人活動で出品されている同人誌が原作のアレンジをしている場合に関係してくる権利です。作品アレンジを行うことが可能なのは、基本的に作者だけなのです。
しかし、コミケ(コミックマーケット)やCOMITIA、ネットでの同人サークルなどではこのような違法なアレンジが加わった商品が販売されているのも事実なのです。
同一性保持権
次に説明するのは、同一性保持権です。原作者の意にそぐわないように、絵柄、ストーリーや世界観をかえてはいけないという内容の権利です。
内容の良し悪しより、原作者の求めていないストーリーや、原作を否定するようなマイナス要素なども問題になります。
複製権
著作物を複製し流通、譲渡(販売)する権利。同人誌もそれにあたりますが、ビックリなのはコスプレイヤーもそうなのです。
好きなキャラクターの衣装を身にまとい同人活動の場に現れる大勢のコスプレイヤー達、実はその行為自体がグレーゾーンなのです。なぜならキャラクター衣装も著作物だからです。手作りといえど再製しているのです。そのことから、複製権の侵害になりえるのです。
上映権
そのほか、上演権(演劇のように著作物を大勢の方に見せたり、聞かせたりする権利)に関わるケースもあるので、同人活動にはさまざまな法的なルールが絡み合っています。
コミケの経済効果
一見、ほとんどのケースで違反しているように感じますが、市場価値が高いからという理由で黙認されている部分があります。コミックマーケットの経済効果は約180億円ともいわれており、かりに中止になれば会場代や近隣のホテル、制作クリエイターや印刷会社、交通期間などに与える経済的損失は非常に大きいものになります。
以上のことからもわかるように、同人業界は守らなければならない文化のひとつです。2020年、コロナウイルスの影響で日本最大の同人活動のコミックマーケットやCOMITIAが中止になっていました。
しかし、COMITIAに関してはクラファンで1万人超の支援者から約1億3,000万円を集めることに成功し、開催されています。
近頃では、ネットでの同人活動も進んでおり、SNSや掲示板を利用し同人誌の販売を行うケースも多くなってきました。ネットでも当然マナーは存在します。マナー違反者はどこにでもいるのか、ネット上でのトラブルも多く発生しています。
明治時代から続いてきた同人活動。さまざまな問題を抱えながら、ここまで大きな経済効果を生むまでに成長した同人文化は、同人活動を行う方々の努力があってこそ存在しうるものです。
これからも同人文化のルールやマナーを守り、更なる発展を目指しましょう。
まとめ
これまで、同人詩で頒布を使う理由について説明しました。販売ではなく頒布なのか、それは、伝統文化のイメージを壊したくないという日本特有の風潮が深く関係しているようですね。営利目的(金銭の受け渡し)=悪いイメージというのも考えどころです。なぜならコミックマーケットなどのビックイベントも同人活動として存在し、約180億円の経済効果があるのです。1万人超の支援者からの出資により復活開催するほど、同人活動は人気なのです重要なのは販売、頒布を悩むよりマナーやルールを守ることではないでしょうか。現在同人活動を行っている方、これから始めようとしている方、大切なのは同人文化を学ぶことだけではなく、さまざまなルールやマナーを学び守っていくことです。