マンガと小説の同人誌の印刷の違い
即売会では様々な同人誌が販売されていますが、大きく分けると小説とマンガにわかれます。作成者のサークルが得意な方法で作品を表現しているのが同人誌です。原稿を用意して印刷するのは同じですが、実は細かな違いがあるので知っておきましょう。まずは、サークルでどちらにするか決めたら気をつけるべきポイントを確認します。
アナログとデジタルのどちらかで作成
原稿は、紙で作るアナログとパソコンで作るデジタルの二つに分かれます。印刷所に入稿する時、アナログは持ち込みか宅配、デジタルはオンラインで送信するのが一般的です。最近ではデジタルの方が多くなってきていますが、マンガはアナログという人が少なくありません。
逆に小説は、紙の原稿を使うことが少ない傾向です。というのも、小説は基本的にワープロソフトを使って文章を書いていきます。そのままデータを入稿して、印刷を依頼して同人誌にするサークルも珍しくありません。全ページソフトで用意して、一気に印刷を頼むところもあるほどです。マンガは一部のソフトをのぞいて、手書きとパソコンのどちらでも1ページごとに用意します。
ただし、印刷所に頼む時は全ページどちらかに統一しなければいけません。もちろん、小説でも全てのページを専用の用紙にプリントアウトしてアナログで依頼する人もいます。とはいえ、大部分がアナログでオンライン入稿が一般的になっています。どちらにしても、小説ならパソコンをまず用意した方が良いです。
必要な道具が異なる
同人誌を印刷するためには当然原稿を用意しますが、原稿は小説と漫画では作り方がだいぶ変わってきます。大きく違うのが文章を書いたりイラストを描く道具ですが、マンガならアナログとデジタルで用意すべきものが変わってきます。アナログなら、一般的にケント紙やマンガ専用の原稿用紙が必要です。
下書きには鉛筆かシャープペン、ペン入れにはインクやGペンなどを用意します。コマ割りなどで、製図用の道具を使う人も珍しくありません。スクリーントーンも忘れてはいけないアイテムの一つでしょう。デジタルにしたい時は、必要に応じてスキャナーを準備します。後は、イラスト系か専用のソフトが必要です。パソコン上で全て描きたいなら、ペンタブレットもあった方が良いです。
一方、小説ならパソコンとワープロソフトがあればシンプルな同人誌が作成できます。ページの一部にイラストを入れたりしたい場合は、イラスト系ソフトがあった方が便利です。パソコンで原稿を作る場合でも、確認で出力するためにプリンターがあるとより安心です。
ページ数を調整したいときのポイント
印刷所では様々な仕様の同人誌を作成してくれますが、ページ数は基本的に4か8の倍数になっています。これは、印刷をして製本するまでに使う用紙や機械の仕様によって決まっているものです。そのため、小説やマンガで作品を作成したら最後にページを調整するという作業をしなくてはいけません。
最初にページ数を考えて、下書きをして原稿を用意する人もいます。しかし、書いているうちにページ数が変わってしまうということも珍しくありません。小説の場合は、文字の大きさや行間などを変えて調整することが簡単にできます。
ただし、文字を小さくしすぎると見にくくなるので注意が必要です。マンガは小説のように文字の大きさを調節しても、分量を変えることができません。よく使う手法だと、奥付やお知らせなどのページを別途用意することがあります。読者に向けて、挨拶や感謝のコーナーを作っている人もたくさんいます。
といっても、何ページもあると大変なのでマンガの時は初めのコマ割りなどの下書きをする段階で分量を決めておくことが重要です。
使う用紙を選ぶポイント
同人誌を印刷所に頼む場合、本文の紙も自由に選ぶことができます。一般的に多いのは、上質紙90キログラムや70キログラムと呼ばれる紙です。白くて、表面にわずかな光沢があり厚みがあって黒いインクの発色がきれいになります。マンガだと特に、この上質紙を好んで使う人が少なくありません。
厚めなので、ベタ塗りのページがあっても裏に助けることもないからです。他にも、少し色の入った厚めのタイプを使った同人誌も良く見られます。ただし、特殊なものになると料金は若干高くなる傾向があるので注意が必要です。
一方、小説だと上質紙90キログラムや70キログラム以外に少し厚みの少ないタイプが好まれます。商業誌では、マンガに比べると薄いものが使われていることが多いです。ページのめくりやすさや、小説ならベタ塗りもなく裏にうつりにくいというのも理由の一つです。
同じものを選んでも、印刷されたときの印象がかなり変わってくるので注意してください。慣れないうちは、他のサークルで作成された同人誌などを参考にして紙を選んでみることをお勧めします。
表紙のデザイン
同人誌を作成する時、最後に多くのサークルで気合を入れるのが表紙です。即売会で、テーブルに置かれたときに人目を引くきれいなデザインにする必要があります。表紙の出来によって、販売される部数も大きく変わる可能性があるからです。小説の場合は、文章が勝負なので必ずしもイラストである必要はありません。
単色でタイトルだけシンプルにデザインしたものも、会場ではよく見られます。挿絵などを依頼して、その人にイラストを書いてもらうことも珍しくありません。ただ、パッと見たときにマンガと勘違いされないようにすることも重要です。マンガの同人誌では、基本的にイラストにした方が良いです。タイトルだけだと、本文も文字ばかりだと思われる可能性があります。
もちろん、描くのは本文を書いている本人にしてください。中身と描いた人が違うと、手にとって読んだ人が驚いてしまいます。最近ではフルカラーが多いですが、デザインの仕方によっては単色や2色もきれいに纏まり一定の人気があります。作成する時は、表紙をどうするかをまず考えることも大切です。
オフセットとオンデマンドを使う
即売会では1日に数百単位で売るところもありますが、数十冊売れないことも珍しくありません。特にサークル活動を始めたばかりの場合は、知名度が低く販売数も期待できないと覚悟する必要があります。なので、作成する部数も少し少なめにする必要があります。部数が少ない時によく利用されているのが、オンデマンド印刷です。
オフセットでは版を作って大量に印刷するのに対し、コピーと同じ原理で処理するのがオンデマンドです。コピーやレーザープリンターと同じ原理なので、見た目も少し黒い部分が光沢を持つ感じになります。イラストの場合、ベタ塗りの部分が気になるという人もいるでしょう。
逆に文章なら、さほど気にしないという人もたくさんいます。本文に使われるのは一般的に、上質紙となります。オンデマンドなら、フルカラー表紙も比較的安くできるのでお勧めです。とはいえ、小説で表紙はタイトルだけにしたいというならオフセットの表紙が特殊紙に1色刷りしたタイプの方が好みだという人も珍しくありません。値段もさほど差がなくなることがあるので、部数が少なくても小説でオフセットを使う人はたくさんいます。
同人誌を印刷所で依頼して作っているサークルはたくさんありますが、中身の表現の仕方によっては原稿の作り方や準備するものがだいぶ変わってきます。原稿を作るための道具も変わってくるので、まずは表現の仕方を決めて道具を揃えるようにしましょう。依頼する印刷所やメニュー選びも、本文によって変わることにも注意が必要です。