一般的な同人誌の印刷費用と一冊の利益
イベント会場では、同人誌作成を仕事にできるくらい売り上げて利益を出しているサークルの人たちもいます。しかし多くのサークルは、さほど売れず利益が出せないのが実情です。赤字を出さずに楽しく活動を続けるためには。印刷の仕様や発行部数についてよく考えることが重要です。今回は、同人誌の印刷費用と一冊の利益についてお話しします。
もくじ
まず部数と予算について考えましょう
自費出版である同人誌は、内容だけでなく発売する場所や部数などすべてを自分で考える必要があります。出版すること自体が趣味とはいえ、それなりの費用がかかってくるのでまずは予算を決めることが大切です。
イベントで販売したからといって、すべてのサークルが黒字になるような売り上げがあるわけではありません。初めてイベントに参加する場合やジャンルを変えた時などは、顧客がいない状態なので注意が必要です。
できがよい同人誌が仕上がったとしても、思うように販売部数が伸びないことも珍しくありません。また、多く作りすぎると、その分の費用はすべて自分持ちで赤字に直結します。
まずは、前回に参加したイベントなどから何部くらいなら自分で捌けるのかを考えてください。初めてイベントに参加するのなら、30冊や50冊を一つの目標にします。売れ残った分は、通販や他のイベントでの販売分にまわせるので、多少の売れ残りは心配ありません。
たくさん販売すれば収入も多くなりますが、部数は多くなるほど印刷代も高くなるので注意してください。最初はまず、自分で捌ける部数と用意できる予算を考えることが大切なのです。
同人誌には実は相場というものがある
即売会に出かけると、どのサークルでも似たような価格帯で同人誌が販売されています。表紙がフルカラーで細工がしてあるものなど、一部の特殊なものをのぞいて実は同人誌には相場というものがあります。
値段の付け方は簡単で、B5サイズの本なら1ページにつき10円で表紙がフルカラーなら100円を足して計算するのが一般的です。これは、コピー本を作った時の予算を参考に多くのサークルが設定している値段なのです。A5サイズの本の場合は、一般的に値段はこれより安く設定されます。基本的に販売するときは、この計算方法で出した値段になると想定してください。
少しサイズが大きなA4や特殊なサイズの同人誌の場合は、若干高くなる傾向があります。これについては、購入する側も特殊料金とわかっていることが多いので心配ありません。
つまりまとめると、一冊あたりにここで計算した以上の金額をかけると赤字になるので注意が必要ということです。同人誌を作成するときは、この相場より安くなるように工夫しないと大幅な赤字になってしまいます。
部数が増えると単価が安くなるけど
印刷所に同人誌作成を依頼すると、同じ仕様の場合は部数が多いほど単価が安くなっていく傾向があります。たとえば、100部と1,000部では単価が倍以上変わってくることもあるので注意が必要です。
ただし、1冊あたりの値段が安くなるからといって作成する部数を増やすことはおすすめしません。普段、イベントで30部を販売する人が突然一度に300部完売させるというのはとても難しいことです。ジャンルの問題もありますが、何より顧客がつかないと販売数を伸ばすことは不可能です。
単価が安いからといって作りすぎると、結局は自分で在庫を抱えることになります。売り上げも販売した分だけなので、結局は赤字になってしまうので注意が必要です。自分が販売できる数で、予算と部数を決めることが何より大切なのです。
単価が高いと感じたときは、仕様を変えるようにしてください。本文の用紙やインクを変えるだけでも、一冊あたりの単価はだいぶ変わってきます。販売するときの値段はあまり変更できないので、印刷代をどれだけ安くできるかということが重要です。
無理なく損なく同人誌を作成するなら
「少部数だけれど見た目が豪華な同人誌を作成したい」という人は少なくありません。イベント会場でも、数百部を一度に販売しているサークルというのは実は一部しかいないのです。多くのサークルが、さまざまな工夫をして損をしないで利益を上げるように努力をしています。
もし、部数が少ないけれど印刷所に依頼したいのであれば、オンデマンドを選んでみるというのも手です。オンデマンドとは、厳密にいうと印刷ではなくレーザープリントと同じです。ただ、自分でコピーするのとは異なり、用紙も選べて綺麗な同人誌ができ上がります。数百部以上を作るなら、通常の印刷の方が安くなる傾向があるので注意してください。オンデマンドが安くなるのは、ある程度部数が少ない場合に限ります。
さらに、表紙をフルカラー印刷ではなくフルカラーコピーを利用するのもひとつの手です。若干仕上がりに差はありますが、特殊紙を上手く利用すれば見栄えのよい本ができ上がるでしょう。このように、無理に高い仕様を望むのではなく、予算を考えていろいろな方法を検討することも大切です。
原価が安くても販売価格は変わらない
部数が増えた場合や少部数であっても、オンデマンドを利用することによって一冊あたりの単価を抑えることは可能です。値段は1ページあたり10円で計算した価格より、大幅に安くできてしまうこともあるでしょう。ただ、安くでき上がっても多くのサークルでは相場の金額で販売しています。販売数が増えれば増えるほど、利益が増えていくのが特徴です。
とはいっても、売り上げた金額から原価を引いたものがすべて利益というわけではありません。イベントに参加するには、参加費や交通費もだいぶかかってきます。1人で販売が難しい場合などは、販売員をアルバイトで募集することもあります。印刷代以外にも、参加費や交通費などいろいろな費用が必要になるので注意してください。利益が出たからといって、安心せずにどれだけ余裕があるのか計算していくことが大切なのです。
さらに、売り上げの一部は次に発行したい本のために残しておくようにします。販売数が増えるほど、印刷代以外に必要になるお金も大きくなっていきます。原価が安くなっても本の価格を変えるサークルがあまりいないのは、そうしたことも理由の一つです。
何種類か販売物があるときの利益
多くのサークルでは、イベント時に何冊もの同人誌を販売しています。その日に発売したものは新刊、それまでに発売したものは既刊と呼ばれます。一般的に、売り上げの多くは新刊が占めているということはどこのサークルでも共通していえるでしょう。つまり、利益を期待するなら新刊がどれだけ売れるのかと考えるべきです。
もし、一冊あたりの利益が少ない本ばかりになってしまった場合には、あえて販売物を増やしてみるというのもひとつの手段です。たとえば、安価に作成できて高い値段で販売できるグッズを考えて作るサークルもいます。利益が出るかどうか不安に感じたときは、販売する種類や本以外のものを検討してみるのもよいでしょう。
とはいっても、慌ててコピーを利用して安易に本を作ったからといって売れるわけではありません。自分のサークルではどのようなものが売れているのか普段から考えて、人が手に取ってくれるものを常に作れるようにしておくことが大切です。利益を出すことがすべてではありませんが、活動を長く続けるためには赤字続きというわけにはいかないからです。
同人誌の販売価格には、一般的に相場というものがあります。ですから、利益を上げたいときは相場より安い価格で作成しなくてはいけません。そのためには、作成する部数や本の仕様など考えるべきことがたくさんあります。
サークル活動を長く続けるためにも、よく考えて黒字になるようにしましょう。赤字がずっと続いていると、金銭的に続けられなくなることもあるからです。