中堅の同人誌サークルは新刊で何部印刷する?
即売会に参加するにあたり、毎回悩んでしまうのが新刊の部数です。そしてなかなか人に相談しづらいのも部数だったりします。在庫を抱えずに適度な部数を決めるには取り扱うジャンルの人気度、サークルの知名度、漫画か小説かなどによっても変わってきます。そこで今回は、中堅サークルが新刊を印刷する際の目安となる部数についてお話しします。
もくじ
印刷部数は所属するジャンルの大きさ、漫画か小説かで違う
SNSなどを見ていると「同人誌は利益を上げるものではないので少し多めに刷っておくべき」という意見を時々見かけます。確かに同人誌はファン活動の一環であるため、二次創作の作者が版権元よりも利益をあげてはいけないのですが、そうはいっても多めに刷って自宅を在庫の山にするわけにもいきません。そして印刷部数の話はいくら交流がある人でも相談しにくいのが現実です。
そして中堅サークルといいつつも、所属するジャンルの大きさ、サークルの知名度によって新刊の部数は違ってきます。あなたが所属しているサークルが、今が旬のジャンルを扱っているのであれば、規模が小さいジャンルでも売れると考えてよいでしょう。だいぶ前に連載やテレビ放送が終了し、ファンが固定化し、すでに落ち着いているジャンルであれば、流行しているジャンルよりは多く刷らないほうが賢明です。
そして、出そうと思っているのが漫画か小説かでも部数は違います。漫画にも小説にもそれぞれよいところがあるので、どちらがよい、悪いではないのですが、漫画の方が小説よりも買われやすい傾向です。サークル参加が初めてで自分の知名度もそこまでない中で、印刷部数をどうすればよいのかわからないのであれば、漫画にしても小説にしても20部くらいを起点に様子を見るのがよいのではないかと思います。
印刷部数は知名度と、誰に買ってほしいのかによる
あなたのサークルが扱っている作品が週刊誌に現在連載中で、アニメ放映もされている作品「旬ジャンル」であっても、連載は終わって人気が落ち着いている作品を扱っているにしても、結局はあなたの知名度が印刷部数を左右するといってもよいでしょう。いくら「旬ジャンル」であっても、大手サークルと同じ部数を刷れば余ります。
大手と中堅を分けているのは「知名度」でしょう。SNSで「いいね!」やRTを多くもらっている「知名度」というのもあれば、同人活動歴が長くいろいろなジャンルを渡り歩いてきたことによる「知名度」というのもあるでしょう。印刷部数を考えるうえで、自分の知名度を知るのと同じくらい考えた方がよいのが、自分の本を誰に買ってほしいのかという点です。
つまり全年齢を対象にするのか、年齢指定の入っている本にするのかどうかです。全年齢対象と年齢指定の本ではどちらが売れるのかというと、年齢指定をしている本のほうが売れる傾向はあり、年齢指定の本が苦手という人も一定数います。よく売れる本がよいというのではなく、どういう人に買ってほしいのか、自分のサークルを支持してくれる人はどんな人なのかということを作り手側もはっきり考えた方がよいでしょう。
アンケートは参考程度、他人と部数を比べても意味はない
時々アンケートで印刷部数を決める人がいますが、アンケートを信用しすぎると多く刷りすぎてしまう、あるいは少ないという場合も起こりえます。多く刷りすぎては自分が在庫を持て余してしまいます。少なく刷ってしまった場合は再販という手段もありますが、再販によってかえって在庫が増えてしまったとなっては元も子もありません。
アンケートをするのであれば参考程度にしておきましょう。そして同じジャンルで活動し、同時期に本を出そうとしている人がSNSで部数に関してつぶやいていることもあるでしょうが、それも気にしすぎてもよくありませんし、無意味です。あくまでも自分は、どれくらいの人に作った本を見てほしいのかということに集中しましょう。
そして、もっと多くの人に自分の作った本を見てもらいたいのであれば、SNSで作品を投稿するなどして知名度を上げていくことが、印刷部数を上げていくことにもつながります。時々新刊を売って個人通販をするものの、すぐに通販サイトを閉じてしまう人や、破棄してしまう人もいますが、あなたの知名度が上がればそれを通販につなげることもできます。ソシャゲなどでは定期開催されるイベントによって突然過去の同人誌が売れるということもあります。
お客さんは何を見てあなたの本を買うのか
予算が許せば本の装丁も気にかけるとよいと思いますが(むしろ長く活動している人だと、装丁にこだわる人もよく見かけます)、まったく知らないジャンルだけど本の装丁が美しいので買うという人は実際には少ないものです。
購買意欲としては「推している作品、CP(カップリング)だから欲しい」というのが大きな前提にあることが多く、次に「あなたの作品が素晴らしいから欲しい」ということがあります。もちろんこれは、中身がスカスカでもよいとか、あなたの作品は素晴らしくないという意味ではありませんが、こと同人誌に関しては扱うジャンルやサークルの「知名度」が先に立つことが多いのです。そしてその「知名度」のある作品の中でも連載中の作品、BLであること、年齢指定の有無が部数や売り上げにも反映されます。
逆にいうと、お客さんに買ってほしいのであれば知名度のあるもの(週刊誌に連載中の漫画や話題になっているソシャゲ)のBLや、BLでないにしても年齢指定のある本を作った方が売れるのかもしれません。あくまでも同人誌はファン活動の一つであるならば、売れるかどうかよりも自分が作りたい同人誌を作り続けるほうがよいこともあるでしょう。
コロナの影響は考えざるを得ない
ハンドメイドの場合は、作ったものを通販のみで取り扱うということが多いようですが、同人誌の場合、本を作ったら即売会で売るということが多いようです。しかし、コロナウイルスの影響で大きな即売会イベントは軒並み中止になっている中で、同人誌を作るというのは例年よりも難しくなっています。そもそも同人誌は、即売会に合わせて作ることが多くあります。
これは、即売会の告知に合わせることによって自分の本やサークルの告知もしやすいからです。同じイベントに出る人に一緒に宣伝もしてもらえますし、本を買おうとしている人も即売会に合わせてどこのサークルを巡ろうかチェックしています。
先にも書きましたが、イベントで同人誌を買おうとしている人の大半は「推している作品、CPだから同人誌が欲しい」というのがまず前提にあります。大きなイベントがあるということは、売りやすい環境が整っているということでもあるのですが、その環境が整っていないのが現状であり、それがしばらく続く可能性もあります。もちろんイベントがなくても通販で売ることはできるので、長丁場になる可能性はありますが根気強く宣伝し、通販につなげていくことが重要でしょう。
知名度よりも先に考えることがある
サークルの規模や知名度も印刷部数を考えるうえで大事ですが、結局のところ、イベント参加や同人誌の発行部数にどれだけの予算を割けるのかという点に尽きます。同人誌は利益を上げてはいけないというのが前提ですが、即売会や同人誌を発行するのに対し、どれだけの予算を割けるのかということを考えることが大事です。
これくらいの予算でどれだけの部数が作れるのかを事前に決めることで、印刷業者を冷静に比較検討することや、情報収集することにもつながります。先に予算を決めておくことで、原稿の進め具合もある程度の見通しがつくので、イベント直前になって印刷業者に慌てて入稿する心配もなくなります。
美しい装丁の本は一見高そうに見えますが、実際には予算を先に決めておき、早期割引なども使えば、手ごろな値段で作ることも可能なのです。あくまでも装丁は同人誌に彩りを添えるだけのものかもしれませんが、手に取ったお客さんから「装丁が美しくて感動しました」という声があがることも少なくありません。美しい装丁や手ごろな値段の印刷業者の情報は常にネットやSNSなどで情報収集しておきましょう。交流のある人の本を見ているとヒントになることもあります。
サークルの知名度や扱うジャンルの規模は印刷部数に影響を与えるため、自分のサークルの知名度や応援してくれている人はどのくらいいるのかを知ることは大切です。しかし、そもそも本を出すにあたって、どのくらいの予算を割くことができるのかということも部数を決める上で考える必要があります。予算を決めることで入稿の締め切りも決まりますので、原稿作成を計画的に進めることにもつながります。