同人誌を作るなら知っておきたい印刷所の繁忙期
同人誌を作るなら入稿先の印刷所がいつ忙しくなるのかというのは把握をしておいたほうがいいです。だいたいどこの会社も同じ時期に忙しくなります。繁忙期になると社員さんがほぼ会社に缶詰め状態になるほど多忙になりますので、なるべくギリギリに入稿するのではなく余裕を持ったスケジュールで原稿を執筆するのが望ましいです。
もくじ
地獄の沙汰も金次第の「極道入稿」
一般的にニッパチは閑散期だと言われていますが、同人誌を扱う会社は別と考えてよく、繁忙期は冬コミ、夏コミといわれるコミックマーケット主催のイベント前は絶対に忙しいです。特に赤ブーブー通信社(赤ブーブー)のイベントと違い、コミケは3日間連続で行われます。
それでも締め切りに余裕があれば、特にトラブルなく当日に新刊をサークルスペースで頒布することができます。会社によっては早割といって余裕をもって入稿してきた人向けの割引サービスもあるので、それを活用すれば費用も安く抑えることができます。
逆にいうと、それくらいしないといけないほど、繁忙期は印刷会社にとって地獄のような状態が待っているのです。 同人活動をしている方のあいだでは、参加するイベントの前日昼過ぎ以降に入稿してしまうことを「極道入稿」と言います。
作者からすれば印刷所に入稿をしてしまえば「脱稿」かもしれませんが、印刷所からすればそれを翌日朝までに仕上げないといけません。不備などがあった場合、作者に直してもらう必要があるため、余裕をもっての入稿を目指しましょう。
貴方は知らない間に他人の職場をブラックにしているかもしれない
作者が脱稿してから何のミスもない状態で印刷工程に入るということはほとんどないと言っていいです。全年齢の発行物ならともかく、年齢指定のものになると、性的な描写の部分がきちんと隠れているかどうかも確認する必要があります。
これは作者が責任をもつべきことではありますが、入稿先の会社もミスがないか任意であるものの確認します。隠さないといけない部分を隠さずに印刷してしまうことは会社の評価にも大きく影響するため、印刷所でも細かいチェックをすることになります。
本来、入稿の締め切りはイベントの3~4日前、会社によってはもっと早くに設けられますが、締め切りに間に合わないどころかイベント間近に印刷を依頼する極道入稿は、印刷所からすれば「金は払うから何が何でもやってくれ」と言われているのとほぼ同じなのです。これは印刷所にとっても迷惑ですし、実際コミケ前の繁忙期だとスタッフが家に帰れないということも起きているため、避けた方がいいでしょう。
もちろんサークルとして参加する作者にも、どうしても新刊を落とせない(イベント当日に自分のサークルスペースに新刊が並ばないことを落とすと言います)理由もあるでしょう。 コミケともなると落選するサークルも多いからです。せっかく当選したのに新刊を落としてしまったとなると、特に自分の代わりに落選してしまったサークルの人からひんしゅくを買うことにもなりかねません。
極道入稿以外にやったらNGのこと
極道入稿は印刷所からも要注意人物とされるだけでなく、極道入稿をしていることから周囲のサークルからひんしゅくを買ってしまったという話を耳にすることもあります。 仕事など忙しい中で同人誌の原稿を作らないといけない、コミケの時期は仕事の繁忙期とも重なりやすい時期なので、サークル参加をする人は大変だとは思いますが、余裕ある入稿スケジュールを組むのに越したことはありません。
また、入稿先が困ることとして覚えておいた方がいいのが、ページ全体が黒塗りの「黒ベタ」のページがあるということです。 本来、本は8の倍数で製本をします。例えば本文は奥付含めて30pだとすると、2p分を白紙のページにして、全体を32pにする必要があります。
この追加した2p分を黒ベタにしてしまうことが困る内容となります。もちろん意図がある黒ベタであればいいのですが、一面黒の原稿は機械も汚れますし、時間もかかるだけでなく、せっかくの原稿が汚れてしまう可能性もあります。 もし余ったページを黒くしたいのであれば、黒い紙を入れるといいでしょう。
コミケ以外にも忙しい時期があることを把握する
コミケ以外の繁忙期はいつかというと赤ブーブー通信社が主催している5月のスパコミ、10月のスパーク、3月(最近は2月に行われることもあります)の春コミと考えてよいでしょう。 東京と大阪の両方で実施しますが、東京のほうが規模としては大きいです。
コミケにオンリーイベント(以下オンリー)を主催することもありますが、コミケだと参加するサークルが抽選で選ばれたサークルしか参加できない為、赤ブーブーが主催するイベントにオンリーが実施されることが多いです。 旬ジャンルという流行っているジャンルの催し物だと、多くの人がサークル参加をするので、印刷所にとってはコミケの次に繁忙期であるといっても過言ではありません。
もちろんスペースに限りがありますが、ビックサイトへ1日に何千ものスペースが入るわけです。 ビックサイトでない場所で実施するイベントもありますが、多くのオンリーがビックサイトもしくはインテックスで開催されることを考えると、大きな会場で実施するオンリーも繁忙期だと考えていいですし、入稿は余裕をもって行ったほうがいいでしょう。
余裕入稿にはいいことがたくさんある
迷惑がかかるから同人誌を出すのはやめるべきか、製本はあきらめてコピー本にするか、参加する人が少ない時期のイベント参加にするべきかというと、そういうことではありません。
せっかく参加するのですから、締め切りに余裕をもって入稿をするのが大事ですし、イベントに合わせた割引、このオンリーイベントに参加するサークルなら割引しますというサービスもあるので、積極的に使いながらも計画的に原稿を執筆するのが大事です。
一生懸命やっていたのに入稿がギリギリになってしまう、もしかしたら落としてしまうかもしれないということも場合によってはあるでしょう。その場合でも入稿先に一度連絡を入れるなど相談してみるほうが、原稿を受け取る側も相応の準備を先にすることができます。
ほぼ趣味で行っている同人誌活動かもしれません。趣味だから何をやってもいい、いい加減な仕上がりでいいということはなく、せっかく作ったのですから多くの人に見てもらいたいという気持ちもあるかと思います。入稿を余裕をもってすることは、気持ちに余裕を持った状態で原稿を見返し修正する時間もあるということになります。
コロナ禍こそ同人活動で乗り切りたい
コロナ禍によって従来通りの催し物をすることが難しくなっています。 今後コロナがどのように終息するかにもよりますが、2020年は思うように同人誌に関連した催しが実施できなかったのは、同人誌に携わる人たちの記憶に新しいと思います。 現時点ではかつてのような大きいイベントの開催ができなくなっていますし、しばらくは現状が続くと考えられます。
しかし、イベントがなくなってしまったので同人誌を作らなくなったのかといえばそうではありません。 現在はネット上でイベントを主催する人も出ているため、実施されるイベントの時期周辺は業者からすれば繁忙期となる可能性があります。コミケがあるから忙しいというよりも、実施される時期と、その扱っているジャンルが世間では人気があるかどうかで繁忙期も違ってくるでしょう。
また印刷所にとって、繁忙期でありながらかき入れ時でもあるイベントがない今はとても厳しい時期でもあります。会社によっては工場の操業を縮小したり、新入社員の採用を見送らざるを得ない状況でもあります。こんなご時世こそ同人誌を作って、いろんな人に喜んでもらいたいものです。
繁忙期の極道入稿というのはあらゆるところからひんしゅくを買ってしまいかねない行為ですが、コロナ禍でイベントができない昨今、印刷所は操業を縮小せざるを得ない状態に立たされています。こんな時こそ同人誌を作ることはファンの人に喜んでもらえるだけでなく、いろんな個性をもって同人文化を支えてきた会社を応援することにもつながります。