B4サイズの同人誌の印刷依頼はできる?
B4サイズの同人誌の印刷依頼は可能ですが、対応できる会社が少ないことは否めません。会社によってなぜ断られる事態が起こるのか、どういった依頼は断られやすいのか、そして印刷会社に同人誌の印刷を請け負ってもらう策を探っていきましょう。
もくじ
業界でのB4サイズの特殊な特徴
B4サイズというのは業界ではチラシやフライヤーに多く使うサイズです。フライヤー専用の機械があることで大量印刷が可能になり、印刷会社はいろいろな種類の印刷物を作り出しています。特殊な仕様ではありませんが、製本は大きな紙に8の倍数のページ分印刷をしています。つまり、かなり大きな紙に8ページ分を刷る事になるのです。
フライヤー専用の機械を持っていても大きな用紙に印刷できず、B4印刷可能の告知がされていても冊子は不可としている会社が多いのはこの理由のためです。多くの機械の制約にB5以上から製本が可能な製品が多く、会社も汎用性のある高いコストのかかる機械を導入するより、普段多く発注されるサイズの印刷が可能な機械を購入しています。
裁断前の紙のサイズと裁断の仕方が大きな要因ですが、B4サイズ以下だと裁断機が対応していない場合が多いのです。裁断をすべて手でやるにはコストがかかるため、普段は特注、または依頼を受けないというのが本筋です。読者が手に取る最適なサイズに重きを置いて事業を展開することは立派な企業戦略だといえるでしょう。大手の会社で対応が効かないのはこのためです。つまり、小さい会社なら請け負ってくれる確率は高いという事になります。
機械の性能に左右される同人誌の発注仕様
「いつもの業者にお願いしたいのにB4は断られた」ということも多いのではないでしょうか、できるだけ冊子の見栄えをよくするために、同人誌の製作者はいろいろな努力をしています。高彩度を採用してみる、オンデマンドでオフセットより高品質で色再現をよくするなど、オプションを増やせば増やすほど、会社の利益は上がりますが、悩みも付きまとってくるものです。それは機械のコストと仕様です。
安価、オフセット一択で請け負うか、高機能な機械でクリエイターの意向に沿えるようにするか、に関しては経営者の考えになります。表紙にはPP加工、表紙とカバー箔押しできらびやかに、角丸にして優しいイメージでなど、最近の同人誌は昔の金糸仕様並みに豪華ですが、この要望に応えるにはコストをかけなければなりません。
ここでもB4版は排除される傾向にあります。評判の高い会社でもB5版以上からが多く、B4版を発注したい方は断られてしまうのです。しかし、依頼を引き受けてくれる会社もあります。セットパックに偶然ある可能性もあるので、根気よく探すと希望の仕様を満たしてくれる会社があるでしょう。妥協して冊子のクオリティを下げるのもひとつの手段なので検討してみてください。
納品に使われる業務用ツールを使ってみよう
業界で使われている業務用ツールのデータを使って納品すると、依頼を受けてくれるかもしれません。この際には、インデザインやイラストレーターのデータでしっかりとB4版の指定をすることが重要です。これも会社に確認が必要ですが、原稿の納品では対応が限られている場合が多く、デジタルデータでなおかつ印刷用のツールのデータで納品した場合は、さまざまな仕様に対応してくれる場合があります。
これも人件費や手間などのコストと密接に関係していますが、本来は決まったサイズの原稿に描かれ、その原稿サイズが製本サイズになるのが一般的な作業です。拡大したり縮小したりする作業はイレギュラーであり、非常に手間がかかります。
今でこそイラストレーターのデータで納品されている雑誌のレイアウトですが、以前は写植をしっかりとサイズに合わせ適材適所に貼り付け、それがそのままのサイズで刷られるのが常識でした。今のように自由に文字や写真をレイアウトすることは困難だったのです。
印刷の基本作業がそのまま残っているのが実情なので、フリーサイズには難色を示すのはやむをえないことだといえるでしょう。そこでデジタルデータでの柔軟な対応をしてくれる会社を探し、依頼する事で解決の糸口を探してみてください。受け入れてくれる会社が見つかるはずです。
デジタルでの入稿の罠に注意しよう
デジタルデータの入稿の際にも約束事や仕様があります。字が切れたり、レイアウトがずれたりしてもよいという方は少ないでしょう。例としては、原稿線など不必要なものは消去しておかないと、そのままでアウトライン化されて印刷されてしまいます。トンボ消しやトンボ外での描写に気を配りましょう。
とくに多い確認ミスが文字切れです。レイアウトはトンボきっちり揃えるのが望ましいです。表紙の背幅を正確に配置しないと印刷されていない白い線や、裏の絵が回り込んでしまいます。表紙と裏表紙の背景色が別の場合はとくに注意しなければならないため、発注の仕様はしっかりと確認しましょう。
発注内容とデータの不一致は致命的です。16ページなら表紙と裏表紙合わせて20ページとなります。これらはツールに慣れないと起こしてしまいがちな失敗ですが、初心者がすべてチェックしきることは難しいでしょう。そのため、プロが原稿からデータを起こすのが一般的なワークフローとなっているのです。それでもB4版で思い通りのレイアウトを実現したい方はぜひチャレンジしてみてください。
いつもの印刷業者にお願いしたいのに断られてしまった
B4サイズの冊子の場合は、いつもの仕様での製本が困難な場合があります。製本のサイズや付加的な仕様にその会社の印刷機が対応できないからです。中小のサークルの依頼の大体はオフセットの範疇で対応できるので問題ありません。しかし、一つの機能に特化しているため、細かい追加仕様に対応がききません。グラビアなどはこれの最たるものです。
サイズに関しても同じで、A4以上のサイズに関しては固定サイズというのは工場ではよくあることです。もちろんその後に裁断を施したり、追加の美麗技術を施したりすることは可能ですが、時間が掛かりすぎる点が難点です。100ページあっても10万円の同人誌は流石にコストをかけすぎでしょう。
それでもクオリティを追及したいのが同人誌の醍醐味ではありますが、コストを考えると高い本でも100ページフルカラーで2万円くらいが上限なので、こちらの仕様を変えてみるのも手段です。高彩度をあきらめる等、どの程度冊子のクオリティを下げると発注可能なのか探っていきましょう。本のクオリティが下がるのは苦渋の決断ですが、信頼のおける会社に依頼したいのならそのような選択も必要です。
印刷依頼は早めの納品で問題を解決しよう
早めに納品して問題点を洗い出し、製本の仕様を決めていくのも手法の一つです。特殊な依頼は会社にとっても挑戦です。会社によっては悩みに寄り添って解決してくれるかもしれません。しかし、そのためにはある程度の期間が必要となります。
同人誌の仕様に妥協を許さない方は、このようなラボ(研究所)のようにその会社とチームを組んで取り組んでみましょう。会社も購入した機械の性能を使い切れていない場合があります。印刷技術も日進月歩で複合的な機能を取り入れた機械が多くあり、印刷会社の多くがすべての機能を使いきれていない場合が多いのです。実験的に新しい機能を同人誌印刷に取り入れた結果、後々その技術が主流になる可能性も否めません。
アメリカのベンチャー企業のような取り組みですが、これは大手企業ではなかなかできない取り組みです。フイルムのような柔らかい透明な本や、CPUのように極小な本がこのようなプロジェクトから派生する可能性があります。会社との共同歩調も決して悪くない選択です。
このように業界も懸命に同人誌製作者の要望に応えようと頑張っていますが、同人誌製作者の表現したいものが高度であればあるほど敷居が高くなり、その分依頼ができる会社が限られてしまうというのが両者共通のジレンマなのです。B4版に限らず、既存の出版物の少ない種類は依頼に注意が必要ですが、このコラムを依頼の参考にして頂ければ幸いです。