小説と漫画の混在した同人誌を作るには?入稿するときのポイント
数人の作家による作品が収められている同人誌を合同誌といいます。読み応えがあるので、合同誌を作ってみたいと思う方は多いのではないでしょうか。ただし、個人で同人誌を作るよりも知識が必要で、多くの手間がかかります。本記事では合同誌を作るときの注意点やポイントを解説しています。合同誌を作りたい方は、ぜひ参考にしてください。
小説と漫画の混在した同人誌は合同誌やアンソロジーと呼ぶ
決められたキャラクターやテーマに沿った、小説と漫画のいくつかの作品を収めた同人誌を合同誌またはアンソロジーといいます。1冊の中に複数の作者による作品が盛り込まれており、読み手としてもかなり楽しめる作品になります。
合同誌・アンソロジーのはじまり
ひと昔前はオフセット印刷の値段が高く、印刷所では個人発注を受けるケースが少なかったのです。そのため、同人誌を作りたいと考えている人々が集まり、印刷代を折半してひとつの同人誌を作るというケースが多くありました。
ここから合同誌が始まりました。現在はオンデマンド印刷が主流となり、かかるコストがリーズナブルになったので、同人誌発行の印刷代は支払いやすくなりました。現在は、コストにかかわらず、同じキャラクターやテーマで一緒に本を作ること自体を目的としています。
合同誌・アンソロジーの違いとは?
合同誌とアンソロジーはどちらも複数人で出版する同人誌ですが、少し違いがあります。合同誌は、キャラクターやテーマを決めて複数人で発行する同人誌です。発行費用は折半し、売り上げも等分します。
アンソロジーは、主催者が声をかけて依頼し、決めたキャラクターやテーマの作品を多数の作家に寄稿してもらう同人誌です。発行費用は主催者が負担し、売り上げは主催者が回収することが一般的です。
合同誌を作るときに最初に決めること
合同誌は複数人で作るものなので、決めておくべきことがあります。ここでは、合同誌を作るときに決めておくことを5つ解説します。
締め切り
応募締め切りと原稿提出締め切りとを決めておきます。応募締め切りは早めの設定にします。提出締め切りの約1か月前にしておくとよいでしょう。原稿締め切りは編集に要する時間を考慮し、入稿日から2週間ほどみておくとよいでしょう。
作家の募集範囲・定員
同人誌未経験の作家の参加可否、何人で作るかは決めておくとよいでしょう。同人誌の未経験者の中にも、引きつけられる作家が多くいます。ただし未経験者の場合、慣れていないため手厚いフォローが必要です。
経験者限定であれば、説明やフォローの手間はかかりにくいかもしれません。また、定員を設けておかないと、編集にかなりの手間がかかってしまいます。無理のない範囲になるように、合同誌の規模をはじめに決めておくとよいでしょう。
本のサイズ
漫画、イラストの同人誌はB5サイズが標準ですが、A4サイズや正方形なども作れます。特殊な形の本だと依頼できる印刷所が限られているため注意が必要です。合同誌では、本のサイズを決めほかの作家に依頼した後は、絶対に変更してはいけません。
すでに決められたサイズで作品を作り始めていたのに作り直さねばならないという事態が起こり、迷惑をかけてしまうでしょう。
依頼する印刷所と入稿ファイル形式
本のサイズが決まったら、印刷所を決めます。印刷所で決められたマニュアルをしっかり読み、ルールを把握しましょう。このときに確認するのは、原稿の裁ち落とし幅と入稿ファイル形式です。印刷所によって入稿できるファイル形式に違いがあります。
複数人で作品を作るからこそ、これらを確認したうえで、作品の依頼をかける必要があります。なれない方が多い場合は、テンプレートを用意するとよいかもしれません。
また、入稿データはフルカラーか、白黒であればモノクロ2階調かグレースケールかいずれかを決めておきます。制作方法がさまざまな作品を集める場合、グレースケールにするとよいでしょう。
台割
台割は同人誌の設計図のようなものです。全体のページ数と各作家が担当するページ数を決めます。そして、どのページにどの作品を入れるか決めておくとよいでしょう。たとえば、小説はこのページに、漫画はこのページに、などを決めておきます。
各作家が担当するページを把握しておくと、本の構成について全体像を把握できるうえ、入稿前のトラブル予防にもなります。
合同誌を作るときに気を付けること
合同誌を作ると、仲間とひとつの作品を作り上げることの達成感を味わえます。トラブルなく楽しく作り上げたいものです。ここでは、合同誌を作るときに気を付けること3つを解説します。
参加する作家との密な連絡とサポート
依頼する作家が決まったあとも、密に連絡を取り合いましょう。質問などにはできるだけ迅速に対応しましょう。依頼する作家が経験豊富な方であれば、サイズ・裁ち落とし幅・解像度を伝えるだけで原稿を完成させてくれるでしょう。
しかし、なかにはデジタルで印刷用原稿を作るのが初めての方もいるでしょう。そういう作家をしっかりサポートする必要があります。同人誌の原稿用テンプレートがセットされているソフトもありますが、すべてのソフトでセットされてはいません。
テンプレートが手元にない場合、参加者が自分で原稿用紙を作るか、主催者がテンプレートを用意する、あるいは印刷所で配布しているテンプレートをダウンロードして使用してもらうなどの方法があります。
金銭面を明確にする
印刷代や参加費は、合同誌を作るのに関わった人数で割って支払う形式をとることが多いです。何に対して費用がかかるのか明確に説明し、各参加者が負担する費用に合意を得ておく必要があります。イベントで頒布したときに黒字となった場合の分配についてもあらかじめ合意を得ておくとよいでしょう。
かかった費用と得られた収益の収支は明確にし、全員と共有しましょう。金銭面はとくにトラブルの原因となるため、制作前から全員の合意を得ておくとよいでしょう。
役割分担を明確にする
収支の確認、完成した本の在庫管理、書店委託を出す場合は書店とのやり取り、イベントに参加できなかった作家への作品送付など、誰が何をするか役割分担をあらかじめ明確にし、各参加者の同意を得ておきましょう。
合同誌を印刷所に入稿するときのポイント
印刷所によって指定の形式があるので、マニュアルをしっかり確認し、各作家にも印刷所のマニュアルを共有しておきましょう。小説と漫画の合同誌で、きれいな仕上がりにするためには、それぞれに適したファイル形式での入稿がおすすめです。
入稿前の編集の際にPDFをPSDなどの画像に変更すると、文字にアンチエイリアスがかかってしまうことがあります。小説はPDF、画像はPSDなど使い分けることがおすすめです。漫画の原稿制作がはじめての方には、塗り・線・用紙の3つのレイヤーを持つPSDファイルで制作してもらいます。
PSDで書き出せない場合、レイヤーを統合して別形式で書き出してもらいましょう。ページには小説も漫画もそれぞれに本全体に通しのノンブルを振ります。
ノンブルは主催者がまとめて編集してもよいですが、PDFに後から入れるのは手間がかかるので、各作家に作品のページ数を伝えておき、先に入れてもらうほうがよいかもしれません。
また、不備があった場合の連絡先は印刷所に入稿する主催者のみです。印刷における許容範囲などについては、参加する作家全員とあらかじめ打ち合わせておくと、完成までがスムーズになります。
まとめ
合同誌は主催者の入稿までのスケジュール管理と参加者との綿密なやり取りが必要です。さらに、主催者には編集するのに多くの負担がかかります。しかし、好きなキャラクターやテーマに沿って多くの作家に依頼できるので、できあがったものは満足度も高く、読み応えもある本になります。合同誌を作るときは、最初に決めごとをしっかり行い、入稿ルールや収支の流れを綿密に共有しておくことが大切です。ぜひ、みんなで合同誌を作ることを楽しんでください。